先日、映画『九十歳。何がめでたい』を鑑賞した。
鑑賞後、すぐに図書館に行き、主人公である佐藤愛子氏の本を2冊借りる。
新装版『戦いすんで日が暮れて』講談社
『我が老後 これでおしまい』文藝春秋社
恥ずかしながら、借りてから1週間以上経ってようやく読み終えることができた。
言い訳をすると、いつか読めると思っていたら、ズルズルと延びてしまった。
まずは、『戦いすんで日が暮れて』の感想を述べる。
この本を借りるまで知らなかったことは、タイトルにもなっている作品が直木賞を受賞していること。(スミマセン)
この本に収められている全ての作品は、男性に対する女性の目線。
しかし、ただ単に女性が被害者でないところがミソ。
男性よりも一枚も二枚も上を行っている。
『戦いすんで・・・』は、主人公の奥さん(佐藤氏自身?)が借金の返済のために悪戦苦闘するが、その中に何かユーモアがある。
ただ、最後の『田所女史の悲恋』は、強い女を演じる女性の一抹の寂しさが残る終わり方だった。
それはそれで実によい。
続いて、『我が老後 これでおしまい』の感想。
『とりとめもなく「暑い」の話』が大変興味深かった。
ここ数日、梅雨が明けていないにもかかわらず、猛暑日が続く。
わが静岡県では、静岡市が39℃を超したとのニュースが入る。
そんなこともあったためか、大変印象に残る。
世間や専門家は、老人が猛暑日にもクーラーを使いたがらない主な理由が以下だと指摘する。
・この世代にありがちな節約癖。
・クーラーは体に害があるという思い込み。
・老人は暑さに鈍感。
しかし、佐藤氏は、クーラーをつけずに死んだ人の中には、「戦時中に叩き込まれた我慢力、簡単に楽を求めることを潔しとしない精神がこびりついていた。」と主張する。
もし、佐藤氏本人がクーラーを付けずに死んだ場合、『主義に殉じて命を落とされた』と言ってほしいとのこと。
熱中症で亡くなってしまったことを、『主義に殉じて・・・』という考えに至ることに、ついクスっと笑ってしまう。
この本は今から約10年前の作品。
今現在、佐藤氏は100才を迎えたので、この作品は90才頃のもの。
まさに、今話題の映画『九十歳。何がめでたい』一致する。
いいおばあちゃんとは程遠い内容。
仏様のような悟りの境地も一切なし。
ただ、言いたいことを言って、煩悩を包み隠さない言動の佐藤氏の生き様に、またまた元気をもらう。
機会があれば、他のの作品も読んでみよう。