先日、我が社にサブリース業者から手紙が届く。
内容は、空室対策についての提案。
我々の所有する物件で唯一、空室があるマンション。
その空室をその業者が10年間、借り上げたいとのこと。
やはり、我々にとって空室が埋まることは喉から手が出るほど欲しい。
提案を聞いてみることにする。
翌日、担当者に物件のあるマンションに来てもらう。
担当者は女性で見た目は30代後半。
名刺交換の際、『宅地建物取引士』の肩書きがある。
私:「宅建士なんですね。」
担当:「2年前にやっとのことで取得しました。」
私:「じゃあ、大変な時期に取りましたね。昔の『取扱主任者』の人とは違いますからね。サブリース業者で働いているなら、宅建の知識があるうちにチンカン(賃貸不動産経営管理士)をとった方がいいですよ。」
担当:「宅建士取得で満足していました。ありがたいアドバイスを嬉しく思います。」
私:「早速ですが、我々としては1階の2部屋を御社にお願いしたいと検討しています。」
まず、担当者からサブリース(転貸)の仕組みのレクを受ける。
その後、この業者が国交省の認可を受けているかの有無を確認する。(受けている)
そして、一番大事なリノベーションの費用を聞く。
2部屋を確認したあと、衝撃的な言葉が出る。
担当:「これだとだいたい1部屋200万円、計400万円/2部屋になります。」
私:「えっ、どんなに高くて100万円ぐらいって思っていました。それでは、パンフレットに書かれている3年で回収はできませんよね。倍の6年近くかかってしまいます。」
担当:「・・・。2部屋で300万円はいかがでしょうか」
私:「分かりました。今日明日中に検討し、@@さん(担当者)に連絡いたします。」
自宅に戻り、以下の手順でシミュレーションしていく。
<リノベを行った際の手残りのシミュレーション>
① 10年間の2室の満室想定賃料を計算する。
② ①から手数料5%を差し引く。
③ ②から10年間値下げなしの場合と、賃料見直しでMax15%下落した場合の2パターンを算出する。
④ ③の2パターンの賃料とリノベーション費用300万円の関係をグラフ化する。
まず、リノベ費用300万円がいつ頃から回収できるかを表すグラフを以下に示す。
このサブリース業者のホームページやパンフレットには、3年で回収できることになっている。
しかし、シミュレーションの結果、やっと『5~6年目で回収』となる。
次に、リノベーション返済と手残りとの関係を考える。
サブリース業者によると、機会損失(空室状態)が減り、『手残りがアップする』とアピールしている。
しかし、私がシミュレーションした結果、リノベーション返済の割合と機会損失がほぼ一緒。
すなわち、サブリース業者にお願いしても、しなくても同じこと。
最後に、300万円のリノベーション費用を行った場合の手残りを月々の賃料に当てはめた2パターン(賃料下落なし、Max15%下落)で想定する。
すると、1部屋5千円~1万円引いた賃料になっている。
ずばり、メチャクチャ安い賃料になる。
これらのシミュレーションをもとにして出した結論。
この業者に部屋を貸しま『せん』。
だったら、単純に賃料を下げる。
もしくは、民泊やレンタルルーム、時間貸しとして活用していきたい。
翌日、業者の担当者に丁重にお断りのメールを送る。
妻とも話したが、決してこのサブリース業者が悪徳業者ではない。
ただ、我々の部屋の賃料とリノベーション費用との費用対効果が合わなかっただけ。
我々の物件でさえ、6年目以降からは回収できるので損はしない。
気になったのは、ホームページやパンフレットに掲載されている『3年目から回収可能』と『手残りアップ』が異なっていること。(それって、誇大広告)
もしかしたら、裕福な大家さんが何もしたくないので、固定資産税分だけ稼げばいいぐらいの感覚だったら十分あり。
我々のように『費用対効果』を考えている者には、ご縁がなかった。
今回の業者とご縁はなかったが、我々に空室対策についてあたらめて真剣に考える良い機会を与えてくれた。(感謝)