再び、後藤正治著『不屈者』。
前回は、元プロ野球選手の森安俊明氏を取り上げた。
今回は、将棋棋士の谷川浩司九段。
以前、将棋棋士に注目した村瀬信也著『将棋記者が迫る棋士の勝負哲学』幻冬舎 ¥1,650円の本を紹介した。
今現在の将棋界は、藤井聡太中心といえる。
しかし、我々が子供の頃は、今回の主人公の谷川浩司が中心だった。
彼のキャッチコピーは『光速流』。
詰めの速さ、正確さはピカイチ。
10年いや、20年に一度の天才と言われた。
その後、森内俊之、渡辺明、羽生善治、藤井聡太と次々と天才が出現する。
そのため、谷川浩司一強時代では無くなってしまう。
この著書では、羽生善治に7冠を達成され、谷川本人が無冠になってしまったこと。
そして、その当時の心境を詳細に書かれている。
非常に興味深い内容だ。
さて、ここでは、著書で印象に残った2つを紹介する。
※ ⇒は私見を述べています。
① 最短の寄せコース、手数はかかるが安全コースの2つのコースならば、谷川は『最短コース』を選ぶ。
終盤において、幾通りかの勝ち方が見えてくると以下の2つのコースを選択することになる。
・危険ではあるが、最短の寄せコース。
・手数はかかるが、安全に勝つコース。
「最短が実は元も安全ではないか」と言う。
安全コースは安全と言う通り、気が緩み、悪手が生じやすい。
最短コースは危険であると自覚がある分、より注意深くなるため、手数が少なく間違いも減る。
⇒私なら、間違いなく安全コースを選ぶだろう。
将棋をやらない私だが、ゴルフで、幾通りの攻め方があったら、間違いなく『安全コース』を選ぶ。
そして、毎回、失敗するパターンとなる。(その前に圧倒的な練習不足)
② 羽生善治に7冠を達成され、自分は無冠となってしまった時の仰天の言葉。
谷川談「羽生さんに対してもファンの方たちにも申し訳ない将棋を指してしまった。」
この発言は、奇をてらったわけではない。
谷川の心からの気持ちだったのだろう。
⇒この土壌には、彼が浄土真宗本願寺派の寺の家に生まれたことも影響しているのであろうと想像する。
私みたいな性格なら、自分に腹を立てたり、周りに八当たったりしていただろう。
さすが、谷川さんである。
仏様のように、全てを悟っているような気がしないでもない。
これで、後藤正治著『不屈者』の紹介は終わりとなる。
それにしても、後藤正治氏は我々が知らなかった様々なエピソードを紹介してくれて有難い。
今後も、後藤正治氏の著書を読み進めていきたい。