城山三郎氏の本は大好き。
特に、元国鉄総裁の石田礼助氏を描いた『粗にして野だが卑ではない』には感銘を受ける。
その他にも渋沢栄一を描いた『雄気堂々』、通産省内の戦いを描いた『官僚たちの夏』など実に素晴らしい。
そんな中、『少しだけ無理をして生きる』を書店で見つける。
最初のページをめくった時、以前読んだことがあると思ったが、「もう1度読み返すのも悪くない」と思い購入を決定する。
しかし、読み進めていくとグイグイと引き込まれてる。
渋沢栄一はもちろん、東京裁判では軍人以外で初の死刑を受けた広田弘毅、凶弾に倒れた浜口雄幸についての説明は、胸が熱くなる。
今回、特に印象に残ったことが以下のこと。
精神科医があらゆる精神的崩壊を診てきて、そうならないための秘訣は以下に示す3つの柱をしっかりと持つとよいとのこと。
『人間を支える3つの柱』
・セルフ(self)・・・自分だけの世界
・インティマシー(intimacy)・・・親近性。浸しい人、家族、友人、近親者、地域の仲間など。
・アチーブメント(achievement)・・・達成や生きがい。目標を立てる、仕事や遊び、趣味におけるもの。
この3つの柱をバランスよく太く充実させれば、万が一、1本の柱が揺らいでも、あとの2本が支えてくれる。
私も過去を振り返って、大変厳しい状況に追い込まれた。
その時、完全に3つ目のアチーブメントが崩壊した。
しかし、セルフとインティマシーが持ちこたえていたため、何とか精神的崩壊を防ぐことができたと思う。
なぜなら、その時は、あらゆる書物を読みあさり、自問自答を繰り返した。
これは、セルフに当たるだろう。
また、逆境の時に、本当に妻、家族が支えてくれた。
これは、インティマシーだろう。
苦しい時期を乗り越えて、早5年超が経過。
当時、完全に崩壊した3つ目の柱だったが、それから新たに育ってきていると思う。
苦しい状況や逆境を経験したからこそ、改めて読んでみて、この部分に感銘を受けたのだろう。
ちなみに、この本で知ったのだが、井上準之助氏(蔵相)が家族とのだんらんを過ごすために建てた別荘が私が所有する物件の所在地にある。
井上氏に対してちょぴり親近感がもてるエピソード。
それにしても、城山三郎氏は人物を描くことが大変上手いと感心する。