1日10時間。昼寝も含め、僕がフルスペックを発揮する際に必要な睡眠時間である。その前提を以て鑑みれば、合宿や遠征といった集団行動が求められる場において毎度もっとも苦慮するのが睡眠時間の確保であることはなんとなくでもご理解いただけるだろう。普段であれば練習の合間、隙間時間に気絶したように眠るのだが、こと今回の合宿においては隙間時間にはレクリエーション活動が多く入っている。そうであるが故に前述のタイミング・長さの睡眠をとることが叶わず、18時を過ぎると急激に眠くなりぱたりと眠る。ここ二日、正しくそんなルーティーンが続いている。そうなると夕食の時間に脳の再起動が間に合わず、まともに話したり考えたりすることが出来なくなる状態の出来上がりである。この合宿においてCOXでも作業でもなく、まさか睡眠不足に苦しめられるとはだれが想像しただろうか。
一説には、人間が睡眠なしで稼働できる時間は15時間であると言われるが、朝6時から動き続けて18時に充電が切れるあたり、どのような事柄でも例外は存在するのだ、と妙な感心もするものでもある。僕個人の身体的特性という側面から見れば、分かり切っていた事実ではあるのだが。
誤解しないで頂きたいのだが、レクリエーションが僕にとって不愉快という訳では全くもってない。寧ろ今日まで3回あったレクリエーションは、僕にとって興味をそそられることの連続である。誰しも自身のなかにある「優先順位」を再認識し、その共有を促していただいた安島コーチの「価値観ワーク」、視界がないという「当たり前」が変容した環境の中で、相手に伝わる声掛けや動き方を直感的に理解させていただいた加藤さんの「コミュニケーション講習」、それに社会の在り方やそこに関わるプレイヤーの多様性、そして地球環境保護の難しさと楽しさをゲーム形式で学ぶことができた吉田さんの「ゲーミフィケーション」と、このように学んだ内容は実に多岐に渡るし、そのどれもが思わず膝を打たされるものばかりであった。
それとともに感じたのは、ひとそれぞれに異なる「人生」の多様性である。ここ3日の講師の方々は勿論、金大さんや我々新大ボート部のひとりひとりに至るまで、今日の自分に繋がる人生があり、直面した人生の岐路があり、選び取った選択がある。だからこそその価値観は多様であるし、大切にしているものや考え方もひとそれぞれに異なる。そして、「伝えたい」と意欲を持つ、人生をかけたいものも。
「普通かそうじゃないかなんて、考えることがそもそもおかしい」
映画化・漫画化もされた小説「かがみの孤城」の一節。そして、加藤さんのレクリエーションで強調されていた「普通について」という問いに対する、一番しっくりくる僕なりの答え。きっと、誰もが普通で、普通じゃない。そして、普通であることに安堵する必要も、普通でないことに恐怖を感じることもない。これを読んでいる貴方も、僕も、そして誰の人生も、世界から見ればたった一つしかないのだから。
講師の方々それぞれの人生観に触れ、それを「他人の人生」と片付けるのも選択肢の一つ。しかし、その講師の方々はもれなく、また紛れもなく、それぞれの人生を、僕とは違う経験を重ねて生きている。いつか自分ひとりの価値観では乗り越えられない何かに直面したときに、そういった「人生観」は必ず僕を助けてくれる。だからこそ、レクリエーションをただのレクリエーションとして消費するのではなく、自分なりに「消化」し、腑に落ちる「経験」として刻み付けたい。
そして。それぞれの人生を歩む、色々な人がいるからこそ思うのだ。
「少なくとも、オレたち、助け合えるんじゃないかって」
文責:COX・広報長・漕手2年 谷村