「倒れこんだ芝生の感触、空の色は忘れるな

 2018年7月3日、日本時間5時。西野朗は日の丸を背負った戦士たちに、そんな言葉をかけたという。

 サッカーFIFAワールドカップの決勝トーナメント1回戦、日本はのちにこの大会で優勝することになるベルギーと対戦。2点を先取するも追いつかれ、このまま延長戦に入ろうかと思われた後半終了間際、ベルギーの強烈なカウンターを防ぎきれず失点。ロシアの地を去った。俗にロストフの悲劇と呼ばれる、サッカー人として忘れられない出来事である。

 あのとき、カウンターの起点となったCKがキャッチされていなければ。その前のFKがセーブされていなければ。延長戦を良しとして、カウンターを警戒していれば。重ねたいくつもの後悔は、しかし取り返せない。日本サッカーは歴史を変える瞬間を逃した。もしかしたら日本の結果は、このワールドカップの覇者すら変えてしまう可能性があった。それでも。結果は覆ることはない。

 

 それから4年。日本サッカーは目覚ましい発展を遂げ、2022年カタールW杯に挑むことになる。苦しい予選結果、コロナとの闘い、世代交代の苦戦など、茨の道を歩んだチームはしかし、グループステージでドイツとスペインに白星を挙げて決勝トーナメントに駒を進めることに成功。決勝トーナメントではクロアチアにPK戦で敗れるも、2010年以来、ベスト8の壁に最も近づいた。

 後悔は取り返せない。結果は覆ることはない。それでも、この国のサッカーは負けを受け容れ、一歩ずつ前に進んできた。いま、日本代表のフルメンバーはビッグクラブを含む欧州で躍動する選手たちばかり。2022年のワールドカップでも指揮を執った森保は、日本代表監督の最長就任期間を今も更新中だ。2026年に三か国共催で行われるワールドカップの予選も、日本は危なげなく通過した。「絶対に負けられない闘い」という、一昔前では当たり前だった煽り文句が通用しないほど圧倒的な差をつけて。今のそういう姿は、ロストフで刻み込まれた芝生の感触を、映り込んだ空の色を関わったひとりひとりが忘れることなく歩んできた道のりの結果だろうと、僕は思う。

 

 さて、明日はTTが開催される。1年生にとっては初めての記録会である。それと同時に2年生以上の漕手にとっては、2月に感じた後悔を、突きつけられた残酷な結果を、塗り替えることのできる絶好の見せ場である。入学から、あるいは前回の記録会から現状を受け容れ、積み上げてきた道程が、その努力の結果の総てが、明日のTTで遺憾なく発揮されることを願ってやまない。無論、僕自身も、自らのすべてを明日に叩きつけるつもりだ。

 

蹴りだしの最初の一歩から、最初のひと漕ぎから、自分の壁を越えられるように。

Attention…Go!!

文責:COX・広報・漕手二年 谷村