太平洋戦争当時の日本の航空機開発技術レベルを英米との1万メートル走で例えると機体設計は何とかトップに追従、エンジンは半周遅れ、プロペラは周回遅れ、オイルシール、電装系、燃料、潤滑油精製は半周から周回遅れ、過給機も周回遅れ、ジェットエンジンも周回遅れと言ったところだろうか、(;^_^A。結局日本は戦闘機用大馬力エンジンも高高度性能を高める過給機も実用化できなかった。戦闘機用2千馬力級エンジンは中島の誉と三菱のハ43があったが、ハ43は試作レベル、誉は量産に入ったが、エンジンの設計レベルに当時の日本の工作技術が及ばず戦争後期の物資不足や生産ラインの混乱があってトラブル続きでこのエンジンを装備した機体はまともに飛ばなかった。中島のエンジンは小型化のために排気量を小さくして回転数で馬力を稼ぐ方式だったので気難しいエンジンが多い。三菱のハ43エンジンは三菱の傑作エンジンである金星の拡大版で素性はよかったが、実用化すれば他のエンジン同様トラブルは避けられなかっただろう。結局当時の日本が実用化できたもっとも馬力の大きい戦闘機用エンジンは三菱の金星(ハ112Ⅱ)エンジンでこのエンジンは昭和4年に米国のP&Wエンジンの技術を導入して製作したエンジンだが、最新型では1500馬力まで出力が強化されトラブルもなく安定したエンジンだった。このエンジンは海軍の99式艦爆、零式三座水偵、瑞雲水爆、96式陸攻、彗星艦爆、陸軍の100式司偵、五式戦、キ96、キ102などに搭載されたが、いずれも安定した性能の傑作機だった。零戦の最終型にも搭載されたが、試作のみで終戦になってしまった。もしも零戦52型が作られた時にエンジンを金星に換装しておけば零戦の戦闘機としての寿命も少しは延びただろう。陸軍はまともに飛ばない四式戦のエンジンを金星に換装しようとした。戦争末期に活躍した五式戦はエンジントラブルに悩まされた整備兵から「燃料とオイルを入れさえすれば何時でも飛べる」と好評だったそうだ。また搭乗員もいざという時に調子が悪くなる誉よりも馬力は落ちても快調な金星を好んだそうだ。誉は徴用工による工作不良や生産目標達成のための粗製乱造、粗悪な燃料やオイルのためにトラブルが続出、海軍はそんな誉に最後まで拘ったが、陸軍はまともに飛ばないハ45装備の四式戦のエンジンをハ112Ⅱに換装しようとした。陸軍は精神主義というが、その辺は海軍よりも合理的だったようだ。海軍は零戦のエンジン換装に関して「航続距離が減少するわりに速度が向上しない」とエンジンの換装を渋ったが、零戦は翼が大きいので速度はさほど向上しないかもしれないが、1100馬力から1500馬力に出力が向上すれば上昇力や機動力はかなり向上したと思われる。戦後五式戦を調査した英軍が「技術的に見るべきものはないが、その時入手可能な最良のものの組み合わせが良い結果を生むことがある」と冷たい評価をしたが、まさにその通りだろう。戦況が不利になると一発逆転を狙って高望みをしがちだが、冷静に実力を見極めて対処すべきなのだろう。零戦も最後は特攻機として悲惨な終焉を迎えたが、早めに金星に換装しておけば戦闘機としての寿命は少しは延びたかもしれない。それでは勝てないというならそんな戦争は始めるべきではなかったのだが、現実は冷酷だった、m(_ _)m😁🌀😱💧👀‼️😅。