太平洋戦争開戦当時の日本陸海軍は欧米に匹敵あるいはこれらを凌駕する作戦機を保有していた。海軍の零戦、97式艦攻、一式陸攻、陸軍の一式戦、二式単戦等々性能的には英米と互角かそれ以上だった。しかし戦争中期以降米軍は2千馬力級のエンジンを積んだ航空機を多数戦線に投入したが、日本側は安定した大馬力エンジンが作れず最後まで戦争初期の機体で戦わざるを得なかった。米軍が高性能爆撃機のB29を投入してもこれらを迎撃する機体は海軍の月光、陸軍の二式複戦など開戦前に試作された機体で飛行性能が劣っていて迎撃には苦労したようだ。日本側も海軍の天雷、震電、陸軍のキ87、キ94、キ102など高高度戦闘機を試作したが、エンジンの不調や時期的に間に合わずものにならなかった。しかし1機種だけそこそこの性能を持つ双発単座戦闘機があった。それは陸軍が試作したキ96という二式複戦の改良型だった。この機体はハ112、海軍名称金星、という三菱の航空機用エンジンを2基搭載して時速600キロを記録、ズームをかければ垂直上昇も可能だった。また空戦性能は単発単座戦闘機に劣っていたが、双発エンジンの出力を調整すれば四式戦に対抗可能だったという。武装は37ミリ機関砲1門、20ミリ機関砲2門と強力だった。世界的に見れば特に傑出している機体ではないし過給機がないので高高度では性能が落ちるが、速度は日本機中トップクラスで強力な武装の本機があればそこそこの活躍はしただろう。しかし当時は本土空襲はさほど差し迫った事態ではなく陸軍はこの機体を扱いかねて複座の地上攻撃機に改修して採用されることはなかった。しかし強武装で相応の飛行性能を有していた本機が採用されていればB29にとってもそれなりの脅威だっただろう。ハ112、あるいは金星エンジンは昭和初期に米国のエンジンを手本に生産されたエンジンで新しいエンジンではなかったが、信頼性の高いエンジンで1500馬力を発揮する当時最高の実用戦闘機用エンジンだった。このエンジンは陸軍の五式戦や海軍の零戦にも搭載されて五式戦は戦争末期に活躍している。このキ96を陸海軍共同で開発装備したら戦局が変わったとかB29の空襲を阻止できたとかそんなことはあり得ないが、それなりに活躍しただろう。開発に携わっていたパイロットも不採用を非常に残念がったという、🙅😁🌀😱💧👀‼️😅🐲。