高高度になると空気が薄くなって酸素の量が減少するのでエンジン出力が下がるのは当然ではある。空気を圧縮して酸素密度を高めてエンジンの高高度性能を維持する装置を過給機と言う。過給機には排気を利用する排気タービンとエンジンの出力を利用して空気を圧縮するスーパーチャージャーがある。これ以外にエンジンのシリンダー内部に水メタノールを噴射して爆発力を高める方法などがあるが、エンジンとのマッチングがなかなか難しいと言う。米国は主に排気タービン過給器を多用した。英国はスーパーチャージャーを二段にして対応した。ドイツは水メタノール噴射装置を使用したようだ。日本は基本的にスーパーチャージャー、そして一部に水メタノール噴射、排気タービン過給器は試験的に装着した程度で実用化はされなかった。スーパーチャージャーは日本の場合1段2速過給機で高度が上がると容量不足だった。2段2速過給機は戦前欧米などでその例を見ていなかったので実用化できなかったとか。排気タービン過給器は排気の高温に耐える耐熱鋼が入手できずまたタービン軸の強度不足や冷却用のオイル漏れなどの問題を克服できなかったようだ。当時の日本の冶金技術にも問題があったのかもしれない。またインタークーラーの装備を忘れていたのでせっかく圧縮した空気も高温でエンジンが異常燃焼を起こすなどの問題もあったようだ。それであれこれやっても故障ばかりで結局実用にはならなかった。排気タービンの装備位置を下げて排気温度を下げるなどの試みもしたが、結局間に合わなかった。またシステム重量が増してエンジンのパワーアップ分と相殺なんてこともあったそうだ。スーパーチャージャーも2段にするという例を見ていなかったことがネックとなりドイツなどのエンジンを見習って流体継ぎ手、今風に言えばビスカスカップリングのようなものか、による2段過給機を作ろうとしたが技術的に流体継ぎ手の製作がうまくできずに失敗した。結局ハイオクガソリンの入手困難からドイツや日本では水メタノール噴射で気筒温度を下げて爆発力を高める水メタノール噴射が盛んに行われた。しかしこれはエンジンとのマッチングの問題もあり三菱の金星や火星ではうまく行って問題も少なかったが、中島の栄や誉は全くダメで軍も技術者も手を焼いたと言う。一方で陸軍では隼に栄31型の小改良型のハ115Ⅱでは性能が向上したと言うので海軍の整備がいいとか悪いとかそういう問題ではなく微妙な調整の問題なのかもしれない。結局太平洋戦争当時、特に後半の日本陸海軍は高出力エンジンの開発もダメ、過給機などの出力増強装置もダメで万事休した。しかし誉などもきちんと整備すれば100%稼働できたと言うが、これは定期的なエンジンの整備基準を決めて整備を行った結果だそうだが、実際には100%ではなかったという話もある。当時は一応マニュアルはあったが、ほとんど整備は整備員の経験と勘に頼っていたと言うのでなかなかうまく行かない面もあったのだろう。本土の部隊であればないとは言っても交換部品や補給品は少しは余裕があったんだろうが、外地ではそうもいかなかっただろう。そんなこんなで太平洋戦争中はモノにならなかった過給器だが、現在は三菱重工とIHIで世界シェアの20%程度を確保しているようだ。米国はボルグワーナーとギャレットで60%ほどなのでやはり米国はターボチャージャー王国ではある、・・(^。^)y-.。o○。

 

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