帝国海軍と帝国陸軍、どっちがおバカだったか。一般的には陸軍が頭が固くて太平洋戦争へと突入して行ったという陸軍悪玉論が幅を利かせていたが、海軍にしても主戦論を唱えるものは大勢いたようだ。逆に陸軍内部にも対米戦に勝利が見込めないと慎重論を唱えるものも多かったと言う。

陸軍士官は幼年学校で満13歳以上・15歳未満の子供を受け入れて徹底的な思想教育をするので思考が固定化しやすいと言う。海軍兵学校は16歳から19歳の生徒でリベラリズムと柔軟性を重視した教育を行っていたという。海軍の場合は兵士は基本的に艦船に乗り組んで機械を扱うエンジニアなので合理性を重んじる教育が行われたと言う。しかし具体的には陸軍の方が合理的な思考をする点も少なくはなかった。

一つは軍用機の防弾で海軍の場合、戦闘機はもとより爆撃機、攻撃機などもほとんど防弾を考慮していなかった。防弾を考慮し始めたのは戦争も中盤に入って被害が増え始めてからである。陸軍の場合は一式戦や97式重爆と言った戦争初期の機体からその効果はともかく防弾を考慮して実施していた。燃料タンクの防弾と言うのは日英米独ともにほとんど同時期から検討を始めたらしいが、防弾素材の開発に大きな差ができてカネビアン合成繊維や発泡ゴムなどを使用した内袋式防弾タンクができたのは戦争末期だった。

海軍の場合は長期戦を戦うつもりはなく侵攻してくる米艦隊との艦隊決戦で勝敗を決する短期決戦を想定していたので防御よりも攻撃力を重視したのかもしれない。例えば一式陸攻の1個飛行隊が全滅しても米戦艦を1隻撃沈してくれればそれでいいというような考え方だったのかもしれない。まさかソロモンの攻防戦のような大規模消耗戦に引き込まれることは考慮していなかったのだろう。それから暗号、海軍は乱数暗号に絶対の自信を持っていてまさかそれが解読されているとは思わなかったようだが、実際には解読されてしまっていた。

解読と言っても全て読めたわけではないそうだが、概ねの内容が分かれば十分ではある。陸軍は毎回乱数表を変える無限乱数暗号を使用していて最後まで米軍に解読されなかったと言う。しかし一部は有限乱数を使用していたので解読されていたともいう。また海軍は米軍の暗号が解読できず暗号の発信元や宛先、頻度などを分析して米軍の作戦を予想していたと言うが、陸軍は米国のストリップ暗号を一部解読していたという。ただ解読した情報の利用に問題があったとか。海軍は暗号部門は「腐れ士官の捨て所」と言って病み上がりや病気のものを当てていたが、陸軍は精鋭を当てていたという。

航空機の開発なども海軍は開発する航空機の諸元をメーカーに示してメーカーの意見をあまり聞かなかったようだが、陸軍の方が少しは融通が利いたようではある。しかし補給などは海軍の方がはるかに豊かで陸海軍が同じ場所にいると物資の分配などでトラブルになったとか。海軍は艦船で戦うので燃料がないと船が動かない。陸軍は敵に糧を求めるなどと言う戦国時代のような考え方だったことが原因かもしれない。いずれにしても英米に比べると貧乏な国が爪に火を点す思いで蓄積した軍備なので無理を重ねなければうまく行かないところが多かったのかもしれない。

本来ならば軍備で使う金を経済に振り向けて船や戦車を作る金で資源を買ってそれを使って製品を作って売ればよかったのだが、それを武力でやろうとしたところが問題だったのだろう。ある海軍の士官が、「軍艦を持って行って資源を奪ってくるなんて海賊みたいなことをしないで軍艦を作る金で資源を買って来ればいいんだ」と言ったそうだが、分かる人は分かっていたのだろう、・・(◎_◎;)。

 

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