太平洋戦争中の日本の技術については戦艦大和を作ったとかゼロ戦を作ったとか酸素魚雷を作ったとか日本の技術が優秀だったことを喧伝するような記事が多く書かれた。実際にどうだったかと言うと答えは「ノー」ではある。

航空機についてはエンジン、プロペラともに欧米のコピー、エンジンは米国のコピーから始まって何とか独自のものを作り上げたが、戦闘機用の二千馬力級エンジンは最後まで実用化できなかった。ハ45とかハ43などがあるが、いずれも試作の域を出ていなかった。またプロペラは最後まで米国のハミルトン、ドイツのVDM、フランスのラチェなどのコピーでそれでも油圧技術、電動技術が劣っていて不具合に苦しんだようだ。またプロペラは大口径のものを低速で回した方が大きな推力を得られるが、日本の技術者はその辺りを理解していなかったのではないかともいう。

戦後日本の航空機を調査した米軍の調査団が、「エンジンは米国のコピーでプロペラは30年前のものを使っている」とか言ったそうだ。また電装品、油漏れ止め、防振技術なども劣っていたという。航空機用の無線機もエンジンなどの雑音で用を足さなかったようだしゼロ戦が初戦で大活躍したのは機体構造を軽量化して防弾装備を省いた分を武装や航続力延長のために使って性能を上げたが、当時の鍛えに鍛えた搭乗員の技量のせいもあるだろう。戦争末期には新型機の更新は1世代も遅れてしまっていた。それでも戦争末期の混乱した状況の中でジェット機やロケット機を作り上げたことは称賛に値するだろう。

電子機器についてはこれも大きく遅れていた。レーダーは戦争中盤に実用化はしたが、高出力のマグネトロンが製造できず精度で英米のものに劣っていた。日本のレーダーは航空機や艦船を集団でしか捉えることができなかった。そのために射撃用に使用ができなかった。もっとも射撃用に使用して命中弾を得た例もあるようだが、・・。また米国のレーダー射撃もそれほどビシビシ当たったわけでもなさそうだが、・・。潜水艦を捜索するソーナーも英米のように精密計測ができなかったそうだ。また機雷も音響機雷くらいまでは対応ができたそうだが、音響、水圧、磁気を使った複合機雷になると手も足も出なかったようだ。

冶金技術も劣っていて装甲や砲弾の製作にも影響していたという。耐熱合金や超高硬度金属の生産も遅れていて排気タービンの製造、徹甲弾の製造なども英米には及ばなかった。日本は排気タービンができなかったので戦闘機の高高度性能が低かったと言うが、機械式過給機も遅れていて二段二速過給機や流体継手、今でいうビスカスカップリングの類か、を使った過給機を作ることができなかった。

造船にしても電気溶接やブロック建造で遅れていた。陸上でも戦車なども溶接、鋳造技術で劣っていたし、戦車を輸送するインフラが脆弱なために大型の戦車が作れなかったし、戦車砲の製造技術も遅れていた。また榴弾砲なども射程が英米のものよりも劣っていたようだ。また砲弾も鋳物などで作ってあったので発射後に割れるとか敵の戦車に当たっても砲弾が壊れるなんてこともあったようだ。

機銃もバネの質が低くていいものができなかったようだし、燃料や潤滑油も高品質のものが作れずに米国から買っていたようだ。何よりも近代戦の必須物資である石油を米国から買い入れていたが、そんな国と事を構えると言うこと自体無謀の極みではある。戦後日本に進駐してきた米軍が日本の国内の状況を見て、「こんな国を打ち負かすのに何で4年もかかったんだ」と驚いたという。

戦争は人口に資源と技術力で人口も少なく資源もなく技術に劣った日本がどれほど総力を挙げても米国に勝てるはずもなかった。また技術とはちょっとずれるが、海軍と陸軍はそれぞれ独自に武器を調達していて規格を統一するという考えもなかったようだ。だから銃弾も同じ口径でも規格が違うために互換性がなく一事が万事すべてそうであったために生産性を阻害すること夥しかったという。長距離進攻戦闘機は海軍がゼロ戦、陸軍が一式戦、局地戦闘機は海軍が雷電、陸軍が二式単戦と言うように同じ目的でもそれぞれ別のものを使っていたが、例えば長距離進攻戦闘機は陸海軍でゼロ戦を使う、局地戦闘機は陸海軍で二式単戦を使うといった具合に共通する装備はお互いに融通し合えば生産性も少しは向上したのではないだろうか。この辺も末期になって陸海軍共同開発が実現したが、これはもうそうせざるを得ない状況に陥ってしまったからでもっと前から互換性、共通性を考えておけばよかったとは思う。

ただ何をしても米国に勝てるわけもなかったが、ただでさえ小さな生産力をもう少し有効に使えたかもしれない。人口で勝り資源もあり生産力も優れ技術でも凌駕して国力では日本の10倍以上と言う米国にどうしてケンカを売ろうなんて思ったのか分からないが、米国に勝つためにと言って莫大な国家予算を獲得してきた陸海軍としては戦えないとは言えなかったんだろう。また戦えば組織が拡大してポストが増えるとかそんな狙いがあったのかもしれない。外務省なども軍部が腰を引くほど過激だったと言うし、国民も鬱屈した状況を一気に吹き飛ばしたかったのかもしれない。戦争は始めるのは意外に簡単だと言う。しかし終わらせるには莫大なエネルギーが必要だともいう。人間が存在する限り戦争はなくならないだろうが、やはり考えるべきことではある、・・(◎_◎;)。

 

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