これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。まず第一回目となる今回は、トヨタ iQについて紹介していこう。(文/フォッケウルフ写真/トヨタ)

■日本の技術の粋を集めたマイクロカー
歴史が物語っているように、販売台数的にはまったく振るわなかったクルマだが、インパクトとしては国産車史上最大級のものがあった。フランスにあるトヨタの欧州デザインスタジオが創り出したそのスタイリングは、全長が猛烈に短く、横から見るとほとんど"ドア"だけ。タイヤはボディの四隅に配置され、自動車というよりなんだか宇宙船の脱出ポッドのような雰囲気だった。

車名だってびっくりだ。「iQ」なんてアルファベットのみを組み合わせた車名はそれまでの国産車でほとんど聞いたことがない。意味も「知能指数」かと思いきや、「個性(individuality)」、「革新(innovation)」、「知性(intelligence)」の「i」と、「品質(quality)」、「立体的な(cubic)」と「きっかけ(cue)」という言葉の音からくる「Q」との組み合わせだという(トヨタ公式サイトより)。意味深くて、とても知的だ。まだ「80点主義」のイメージがまだ色濃く残っていた2008年頃に、このようなアバンギャルドな装いのモデルを出したのだから、トヨタファンもそうでない人も、きっと多くの人が「あのトヨタが?」と驚いたに違いない。ちなみに、トヨタが初めて世界販売台数で世界一位になったのはこの2008年である。iQが台数に大きく貢献したわけではないが、イメージ戦略などでプラスとなっていかもしれない。

iQについて語るにあたり、まずは「スマート(フォーツー)」についても紹介しなければなるまい。メルセデス・ベンツと時計メーカーのスウォッチ社が協力して生み出した、究極のマイクロカーである。カーマニアでなくてもその存在は知っているという人が多いと思われるが、「スマート」は、1997年に発売されると、欧州に旋風を巻き起こした。当時、世界は「エコ」へ関心度が高まっていた時代。スマートはとにかく全長が短く、省燃費でスペースも取らず、ひとりで乗るにはいっさい無駄がない。道の端に路上駐車する時など、縦置きから横置きに変えることで、従来1台分のスペースだった場所に2台止めることができたのだ(法的にOKかどうかは別として)。これが当時の欧州の「イケてる!」カーライフの象徴となった。

■スマートとの違いはどこにあったのか?
そんな時代背景において、2008年に誕生したのが「和製スマート」こと、トヨタiQであった。日本にはマイクロカーとして軽自動車が存在していたが、その軽自動車より短い全長は、見る人に衝撃を与えた。もちろんiQは、日本だけでなくグローバルで販売され、スマートのようなマイクロカーの需要に対してトヨタが開発した気鋭のモデルであった。ただ、iQはスマートと違って4人乗りである。トヨタとしても史上最小クラスのボディサイズでありながら、4人乗りとはどういうことか?実際に乗ってみると、後席はたしかにものすごく狭い。前席を思いっきり前方へずらさないかぎり、とてもじゃないが小太りな中年男性では後席には座れない。

そう考えると後席は完全に物を置くためだけの場所ではあるが、スマートと違って後席がある(子どもなら座れる)というのは、ひとつの価値じゃないだろうか。しかもこのクルマ、世界初のリアウインドウカーテンシールドエアバッグを搭載していて、後席乗員の安全性に対してもしっかり配慮されていたのだ。そしてもうひとつ、スマートと違ったのは、駆動方式がFFだったこと(スマートはRRである)。省スペース大国の日本が発展させたのがFF。限られた車内スペースをなるべく広く使おうとする大きな志を持ったマイクロカーなのである。一方で、走りはどうだったか。FFであることがマイナスに影響することは特に感じられない。サスペンションは硬めに設定されていて、その全長の短さからは想像できないくらいコーナーでも安定していた。ボディも剛性が高く感じられ、上級車のフィーリングだった。さらに、最小回転半径は当然ながら当時のどの軽自動車よりも小さく、スマートよりも小さかった。狭い路地が舞台なら、これも立派なアドバンテージである。

■一代かぎりでその一生を終えた儚さ
iQの歴史を振り返ってみると、デビュー翌年の2009年には、1.0Lエンジンに加えて、1.3Lエンジンが追加されている。さらに2010年には、6速MTを採用する「130G→(ゴー)」なるモデルも設定。その後、次世代モデルが発売されることもなく、2016年に残念ながら生産終了となったわけだが、これだけ特異なクルマが約8年生産され続けただけでも偉大である。さらに、あまり知られていないが、iQには派生車も生まれている。なんとあの英国の名門アストンマーティンからOEM車が発売されていたのだ。

この「シグネット」と呼ばれたアストンマーティン版iQは、アストンらしい横縞グリルが装着され、外板はすこしずつ変えられて、アストンらしくスポーティに装飾された。内装には各部にレザー素材があしらわれて、iQを上回る高級感を醸し出していた。噂によれば、これはアストンマーティンが欧州自動車メーカーに課せられたCO2削減値をクリアするための戦略的OEMだとも言われているが、なんにせよ日本人としては嬉しいことだ。日本を代表するトヨタ車が、英国の名門に認められた瞬間であった。販売台数が振るわなかったことなど関係ない。トヨタの高い技術力と製品性を世界に主張するためにも存在意義があったクルマであった。


こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 iQが世界に示したトヨタの小型車技術の真髄!(ベストカーWeb) - Yahoo!ニュース

 

iQは面白そうな車だった。コペンとどっちにしようかと迷ったが、結局コペンにしてしまった。買おうかと思った車は1.3Gだった。実車は見ることがなかったが、あのボディサイズで1.3リッター6速MTというのはちょっと面白みがあった。当時はもう一人だったので2シーターだろうが、4シーターだろうが、関係なかった。iQは大人3人に子供が1人乗れるという触れ込みだったが、まあいいところ2+1程度だろうか。スーパーチャージャーを装備したGRMNなども出されたが、2016年にはモデル末期で間もなく販売中止と言われた。結局モデル末期で設計的にももう古いということでコペンを買ったが、iQでも面白かったかもしれない。最近はあまり見かけないが、一時期、結構おじさんが乗っていた。ただ日本には軽自動車と言うコンパクトカーがあってiQよりもスペース的にも優れていたし、税金や維持費なども安いのでその点で太刀打ちできなかったのだろうが、なかなか面白い車ではあった。トヨタは全長3メーター以下の車に4人を乗せるというパッケージングのコンセプトを作って見せたのだが、うまくできたせいかコンセプトカーを作ったりアストンマーチンとコラボしたり結構力を入れて販売しようとした。コンパクトカーであれば5人が乗れるし荷物も積める。軽でも4人が乗車して荷物も積める。iQは一つのコンセプトとしてはよくできた車だと思うが、ユーザーにとってこれがメリットというところがないことが販売不振の原因だろう、・・(◎_◎;)。

 

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