旧日本海軍最初の命名基準では人名由来もOK
2019年10月27日、アメリカ海軍において1隻のイージス駆逐艦が進水しました。艦名は「ダニエル・イノウエ」、2012(平成24)年に亡くなった元アメリカ合衆国上院仮議長、ダニエル・イノウエ氏にちなんで名づけられた軍艦です。旧日本海軍や海上自衛隊には、人名に由来した艦名を持つ艦船はないため、「ダニエル・イノウエ」の進水は、日本人を含む初めての日系の人名が付いた軍艦になります。なぜ日本に人名由来の軍艦がないかというと、起源は旧日本海軍の黎明期にさかのぼります。旧日本海軍の創設は1872(明治5)年2月です。当時の海軍艦船は旧江戸(徳川)幕府および日本各地の諸大名が建造したものがほとんどで、戦うための船は軍艦もしくは運輸船の2種類の区分けでしかなく、ふたつの種別の内実も大小さまざまな艦船の混成でした。しかも、それらは名称を変えずに明治政府がそのまま用いたため、軍艦であっても国名、山岳名、気象名などが混在していました。
 
そののち明治政府が建造ならびに購入した艦船は、海軍卿(のちの海軍大臣)がいくつかの名称候補を用意し、太政大臣(のちの内閣総理大臣)が天皇陛下に提出、決裁(勅決)という流れで命名されましたが、山や川の名称がメインで、やはり統一性はとれていませんでした。
そこで艦船数の増加などもあり、最初の命名基準が1874(明治7)年に作られます。とはいえ、このとき軍艦名については日本の名山や大河、国名、または著名な人名に限るとされ、特段、人名付与が禁止されたわけではありませんでした。
 
人名や都市名を避けるのは軍艦が沈んだときのため
本格的に戦艦や巡洋艦などの艦種ごとに艦名基準が明確化されたのは、1905(明治38)年8月に定められた「艦名命名則」によってです。これにより戦艦は旧国名、巡洋戦艦および一等巡洋艦(のちの重巡洋艦)は山岳名、二等巡洋艦(のちの軽巡洋艦)は川の名前などと規定され、都市名は使用しないというガイドラインが形作られました。そののち、幾多の改正を経て、1933(昭和8)年には、新たに艦種として加わった航空母艦の命名基準が「飛行する瑞兆動物の名」と規定されています。
 
前述したように、旧日本海軍も1874(明治7)年から1905(明治38)年までは、軍艦に人名を付与することについて、特に禁止していたわけではありませんでした。それでも人名が付与されることがなかったのは、一説によると明治天皇の強い意向が働いたからといわれています。
明治天皇は、日本の軍艦名に人名はふさわしくないという考えを持っていたようです。いくら著名な人名であったとしても、仮にその艦船が沈没などした場合、子孫に悪影響を及ぼすとの思いがあったそうで、その意向を受けて、あらかじめ海軍卿(海軍大臣)は候補案のなかに人名を入れることはなかったといわれています。1905(明治38)年8月に定められた「艦名命名則」において、都市名が除かれたのも同様の理由からだそうで、やはり都市名の艦船が沈没などした際に、当該地域の住民に悪影響が出るのを懸念したからだといわれています。これは、あくまでも諸説あるなかのひとつです。真偽は不明ですが、結果的に1874(明治7)年から1905(明治38)年までのあいだ、人名由来の艦船は誕生しませんでした。
 
海上自衛隊でも人名使用は不可
太平洋戦争後、1954(昭和29)年に発足した海上自衛隊においても、1960(昭和35)年に定められた「海上自衛隊の使用する船舶の区分等及び名称等を付与する標準を定める訓令」において、自衛艦の名称付与基準に人名は入っていません。こうした経緯から、冒頭に述べたように、アメリカ海軍において就役する軍艦の方が、日本の艦船よりも先に日系の人名が付く形となったのです。ちなみに、一般に南極観測船として知られる海上自衛隊の砕氷艦「しらせ」は、日本で初めて南極探検を行なった白瀬 矗(しらせのぶ)陸軍中尉の名字が由来と思われがちです。
 
しかしその由来は、南極にある日本の観測拠点、昭和基地近傍の「白瀬氷河」です。この氷河自体、白瀬中尉の功績を称えて命名されたため、まったく無関係とはいえないものの、白瀬中尉の名前に由来するものではありません。なお海上自衛隊の艦名はひらがな表記のため、植物名や山岳名、河川名に由来するものであっても「わかば」や「はるな」、「よしの」など、人名のように思える護衛艦名が出てしまうのは致し方ないのかもしれません。(柘植優介(乗りものライター))
 
艦船の名前に個人名をつけるというのはその人物、あるいは関係者がいるうちはいろいろと問題があるかもしれない。例えば「なんでうちのご先祖は巡洋艦で向こうのご先祖は戦艦なのか」とかそう言うことを言い出すかもしれないし、事故があったり戦闘で撃沈されたりした場合もあれこれ言われるかもしれない。それに何よりもあまり格好が良くない。個人名よりもやはり「大和」「武蔵」「瑞鶴」「飛龍」「金剛」「榛名」「島風」「初月」「陽炎」「雪風」などの国名、飛翔に関する名称、山岳名、河川名、気象現象などの名前の方が格好がいい。米国などは個人名を艦船に大々的に使用するが、その辺は感覚的な相違だろうか。ただ主力艦には昔も今も州の名前を付けている。過去には戦艦の名前がそうだったし、現在は戦略ミサイル原潜が州の名前になっている。日本の主力艦が旧国名を使用しているのと共通なのは国家の基本は領土と国民という認識からだろうか、‥(^。^)y-.。o○。
 
日本ブログ村へ(↓)