「スペースジェット(旧MRJ)」がまたも納入延期に追い込まれた。6度目となる今回も、経験やノウハウの不足が高い壁となって眼前に立ちふさがった格好だ。2008年の事業化決定から10年以上たっても一向に完成せず、顧客の信頼は大きく失墜。三菱重工業は、三菱航空機の社長交代を決めるなど背水の陣で開発を進めるが、今後の受注活動への影響は必至で、国産ジェットの事業化は文字通り正念場を迎えた。
 
◆社長交代で背水の陣
 「時間がかかるのは避けられない」
三菱重工が6日に都内で開いた記者会見。泉沢清次社長は険しい表情で投資回収が遅れるとの見通しを示した。ここ3年はプロジェクトを三菱重工の最高経営責任者(CEO)直轄とし、開発への関与を深めていただけに、関係者の落胆は大きい。17年1月に行った5度目の延期は、安全性を高めるために電子機器の配置を分散し、配線のレイアウトも変更する必要が生じたのが理由だった。これに対し、今回は変更を施した試験10号機の完成が遅れたのが主な原因だ。延期理由は毎回異なるが、背景に経験不足がある点は同じだ。三菱重工は、米ボーイングの旅客機「787」向けに主翼を製造している。だが、民間航空機は小型ビジネスジェットを手掛けたことがある程度。それより大きい旅客機となると、1965年に運航開始された「YS-11」の国策プロジェクトに参画して以来だ。多様な技術を組み合わせる必要がある航空機開発では、総合力不足は否めない。
 
◆国産こだわり返上も
経験が不足していると、トラブルへの対処にも時間がかかってしまう。試験10号機の製造時にも重要部品の不具合に直面、完成が遅れる一因となった。同社もここ数年は、「国産」へのこだわりをかなぐり捨てて、経験豊富な外国人技術者を高給で雇用。2008年の設立時に1人もいなかった三菱航空機の外国人技術者は。現在約500人を数える。開発責任者には、初の外国人となるボンバルディア(カナダ)出身のアレックス・ベラミー氏を据えた。型式証明(TC)取得に至っていないとはいえ、三菱重工のある社員は「日本人だけだったら、ここまですらたどり着けなかった」と吐露する。地方都市間を結ぶリージョナル機の需要は年々拡大しており、100席級以下は今後20年で5000機以上に達すると予測されている。しかも、最大市場の北米中心に普及している70席級以下は古い機種しかなく、開発中の競合も不在だ。90席級の「M90」に続いて開発を進める70席級の「M100」は依然、需要を総どりできる可能性がある。もっとも、その北米ではこれから老朽機の大量更新という“特需”が始まる見通し。だが、スペースジェットの投入が遅れれば、顧客はより小型のプロペラ機などを選ばざるを得ない。そうなれば、8000億円規模に膨らんでいるとされる開発費の回収も遅れ、三菱重工はさらに窮地に追い込まれることになる。(井田通人)
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■スペースジェットをめぐる主な動き
 2008年 3月 三菱リージョナルジェット(MRJ)の事業化を決定
 2009年 9月 設計変更で初の納入延期を発表
 2012年 4月 検査態勢の不備や製造工程の見直しで2度目の納入延期
 2013年 8月 部品の仕様変更に手間取り3度目の納入延期を発表
 2015年11月 初飛行に成功
 2015年12月 ソフトウエア改修や主翼の強度不足などで4度目の納入延期を発表
 2016年10月 米国で飛行試験開始
 2017年 1月 設計変更で5度目の納入延期を発表
 2018年 3月 三菱航空機が約1100億円の債務超過に
 2018年12月 三菱重工業の支援で三菱航空機が債務超過を解消
 2019年 3月 飛行試験開始
 2019年 6月 名称をスペースジェットに変更 カナダのボンバルディアから小型機事業を買収すると発表
 2019年10月 米航空会社が100機の発注をキャンセル
 2020年 2月 6度目の納入延期
 
 
技術と言うのは様々な継続した経験の上に花を開く。50年前にYSを作って以来、旅客機を作ったことがない三菱重工に最先端の旅客機をデザインすることには無理があった。スペースジェットの初飛行を見ていて「きれいな飛行をする非常に素性のいい飛行機だ」と思った。三菱重工には良い飛行機を作る技術はあった。しかし、時代の最先端の安全性を備えた良い旅客機を作る技術はなかった。それがこの結果だ。しかし、ここで止めてしまったらこの経験はすべて無になってもう二度と日本では旅客機を作れなくなってしまうだろう。すそ野の広い航空機産業は明日の日本には必須の産業だ。だから万難を排しても継続していかないといけない。良い飛行機を作ることはできる。そしてここで良い旅客機を作る技術を学んだ。だから次は順調にできるだろう。がんばれ、三菱重工、期待している、・・(^。^)y-.。o○。
 
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