70席級の新機種「M100」、米国の規制を読む
開発中の国産小型ジェット旅客機「スペースジェットM100」について、米航空会社と100機の受注で協議を始めた三菱航空機(愛知県豊山町)。M100は70席級の新機種となり、最大市場の米国で76席以下とする規制に対応。同機種で大型の受注協議に入るのは今回が初めてとなる。2024年の納入開始を目指すという。米国の航空会社「メサ航空」と、M100の受注に向けた覚書を締結。現状のカタログ価格は40億円程度とみられ、契約が成立すれば受注額は4000億円規模となる見込みだ。100席未満のリージョナルジェット機では群を抜く客席の広さや、燃費性能など経済性で高い評価を得たもようだ。M100は20年半ばの納入を目指す90席級の「スペースジェットM90」より一回り小さな機種で、23年の市場投入を目指している。6月には別の北米の顧客と、15機の受注に向けた協議を始めている。米国規制に対応したM100は今後の主力機種に位置付けており、今回の大型受注で事業拡大に弾みをつけたい考えだ。
「スペースジェットM100」の開発を公表したのは今年6月にフランスで開催された「パリ国際航空ショー(パリエアショー)」。座席幅を広めに設定するなど、100席未満のリージョナルジェット機にはなかった快適性を前面に押し出した設計だ。これに燃費性能など経済性を付加し、来るべき戦いに備えようというわけだ。実際、市場の追い風は三菱航空機に吹き始めている。同社によると今後20年間のリージョナル機市場は5137機の需要が見込め、このうち約4割は米国が占めるという。競合の一角だったボンバルディアは三菱航空機の親会社の三菱重工業が買収を決めた。最大手のエンブラエルはボーイングと年内に合弁会社を発足させる計画だ。ただ業界関係者は「ボーイングはリージョナル機はニッチ市場と捉えており興味はないだろう」と指摘する。加えてボンバルディアは、米国の航空会社とパイロット組合の間で結ばれた労使協定で座席数などの制限がある「スコープ・クローズ」を見越し、90席級の開発を凍結している模様。「ボンバルディアはリージョナル機の最新型を保有しておらず、三菱航空機は十分に戦える」と続ける。
三菱航空機がM100の開発に乗り出すのも、スコープ・クローズが大きく影響している。水谷社長も「スコープ・クローズは(座席数制限などの)緩和が期待されていたが、状況変化が起きず今に至っている」と認識。M100は現状のスコープ・クローズの基準を満たしているため、「個々の顧客のニーズに応えていきたい」(水谷社長)としている。
M90をM100に変更する顧客も。納期は大丈夫?
だが規制への柔軟な対応が、同社の足かせとなる可能性も出てきた。M100より先に開発を進め、20年半ばに初号機の納入を目指している90席級の「スペースジェットM90」は、足元で約400機の受注がある。このうち大半は米国向けで、スコープ・クローズが現状維持となれば、M90をM100に変更する顧客も出てきそうだ。投入時期を23年としているM100に顧客がチェンジオーダーした場合、納入時期はさらに先送りされ、収益化はさらに遠のくことは必至。水谷社長も「納入時期は後ろ倒しになるが、スケジュールを含めて顧客にどう判断してもらうかだ」とし、「顧客ニーズにいかに応えるかが最優先で、収益化の遅れは総合的な判断になる」との考えを示す。
半面、事業化に向けた地ならしは着実に進展をみせている。三菱重工によるボンバルディアのリージョナル機事業「CRJ」の買収がその一つだ。CRJは100席以下の航空機市場で3―4割のシェアを握る。既存顧客との接点を持つことで、M100の提案力を高めるなど事業基盤の底上げにつながる。さらに三菱航空機の課題だった機体納入後のアフターサービスを手に入れることにもなる。三菱航空機が開発する「三菱スペースジェット」シリーズは、5度の納期遅延などで苦戦が続く。M90は運航に必要な型式証明の取得に向けて飛行試験を実施中で、20年半ばに初号機を納入する計画だ。一進一退を繰り返しながら、飛躍の時を待つ三菱スペースジェット。孝行息子になるべく成長痛に耐える時期は当面続くが、勝ち筋が見えつつある。
いい飛行機と言い旅客機とはおのずから異なる。いい飛行機は単に飛行性能がいいことだけで済むが、いい旅客機は運用コストやメンテナンス、改善改修のし易さ、乗り心地や快適性、安全性など様々な面でも優れていることが求められる。スペースジェットはいい飛行機ではあったが、その分野での経験不足でいい旅客機とは言えなかった。それが様々な改善でやっと市場で競える製品に仕上がってきた。その分納期が遅れたが、それは50年間も旅客機を作ってこなかったツケだろう。ボンバルディアを買収してアフターケアの体制とノウハウも手に入れた。旅客などの大きなプロジェクトは続けないと技術の蓄積がない。技術はハード面だけでなくソフト面でも当然求められる。しかし、こうした大型のプロジェクトはすそ野が広く経済的波及効果も大きい。今後も継続して続けて行って日本の基幹産業の一つに育ててほしい。三菱重工は株式市場では今一つ人気がないが、明日の日本を支えていくための技術を持った会社の一つではある。ぜひ頑張ってほしい、‥(^。^)y-.。o○。
日本ブログ村へ(↓)