100匹超のカメムシがウジャウジャ…。日本からの輸出品に潜り込んだカメムシたちの「密航」が南半球の国を驚かせた。外来生物の侵入ばかりが伝えられるが、日本から海外に渡った迷惑な生き物も多い。海外で猛威を振るう日本の生き物たちは、どのようにして危険な「侵略者」になったのか。国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室の五箇公一(ごかこういち)室長に解説してもらった。
日本も「加害者」
2018年2月、日本からニュージーランドへと輸出された自動車1万台以上を積載した貨物船からクサギカメムシが大量に見つかったとして、ニュージーランド政府が船の入港を拒否する事態が起こりました。ニュージーランド政府は、このカメムシが自国の農業を脅かす恐れがあるとして、現在も日本の輸出自動車に対してカメムシの処理を徹底するよう要求しており、自動車の輸出業者たちは頭を痛めているそうです。
今回の騒動を起こしたカメムシは日本に広く分布する昆虫で、ミカンやリンゴなどの果汁を吸う農業害虫として知られます。また東京都内など、都市部の住宅地にも見られ、悪臭を放つことから家屋内では不快害虫・衛生害虫として問題になります。なぜ、今年になってこのカメムシが貨物に大量に紛れ込むようになったのかは不明ですが、たかがカメムシとはいえ、自動車の貿易にまで影響を及ぼしている以上、今後、日本としても原因究明と対策を急ぐ必要がありそうです。
これまで外来生物といえば、日本に侵入してくる種ばかりが注目されてきましたが、今回のカメムシのように日本から海外に持ち出されて外来生物となるものも多数存在します。その中には、海外で定着を果たし、現地の生態系や人間社会に深刻な影響を与えているものもおり、日本は「立派」な外来生物輸出国でもあるのです。
ジャパンの名を冠したやっかいもの
アメリカでは日本在来のコガネムシの一種「マメコガネ」が1900年代はじめに輸送物資に紛れて持ち込まれ、以来、農業の大害虫として問題となっています。「ジャパニーズ・ビートル」と呼ばれ、天敵のいない米国内において急速に分布を拡大し、大豆やトウモロコシなどの農作物に深刻な被害を与え続けています。
ニホンジカは現在、日本国内でもその数が増えすぎて、林業や農業で被害が深刻になっていますが、このシカは、古くから主に狩猟目的および食用としてヨーロッパや米国、ニュージーランドにも持ち込まれています。日本同様に農林業被害をもたらすほかに、在来のシカと交雑することによって遺伝的撹乱(かくらん)を引き起こしていることが指摘されています。
日本ではくず粉や漢方薬の原料として知られる多年生の雑草「クズ」は、1800年代後半に日本から緑化目的でアメリカに持ち込まれました。緑化そのものは成功しましたが、現在、米国内でその繁殖に歯止めが利かず、草原や森林の植生を塗り替えてしまい、さらには自動車や建物、電線までもあっという間に覆い尽くしてしまう「グリーンモンスター」として恐れられています。クズによる被害額については、年間100万~500万ドルという試算もあります。
ワカメも外国では嫌われもの?
19世紀、江戸の鎖国時代に長崎の出島に来日して博物学的研究を行ったドイツ人の医師・植物学者フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが、ヨーロッパへ帰国するときに土産として持ち帰った日本在来のイタドリが、今ではイギリスの政府予算をも揺るがす外来雑草となっています。イタドリは地下茎で繁殖し、アスファルトやレンガさえも突き破って伸びるため、建造物や道路、防波堤、下水道など社会インフラに深刻な被害が生じています。
日本では食用として重宝されるワカメも、海外では大変迷惑な外来生物として問題になっています。ワカメはもともと日本、朝鮮半島の近海に生息する海藻ですが、これまでに、アメリカ、フランス、イタリア、オーストラリア、ニュージーランド、黒海、地中海など世界中の海域に移送されて繁殖していることが確認されています。日本に荷揚げしたタンカーが船体の安定を保つために、空になった船倉に「バラスト水」として日本近海の海水を取り込んだ際にワカメの胞子が紛れ込み、世界中の海域へと運ばれたと考えられています。
ワカメが増えるなんて、日本人から見れば食べる量が増えてありがたいと思ってしまいますが、海外ではワカメを食べる習慣はほとんどありません。そのため、増え続けた侵入ワカメが養殖のカキや、ホタテ、ムール貝、イセエビなどの成長を阻害したり漁業用の機械にからまったりするなど、水産業に重大な影響をもたらしています。ワカメ同様、バラスト水で運ばれたキヒトデと言われる日本産のヒトデがオーストラリアやニュージーランドの沿岸で大繁殖して貝類などを食い荒らす被害も出ています。
生物を介して広がる「日本発」の病原菌
1990年代から世界中で両生類の皮膚にだけ寄生するカエルツボカビと呼ばれる病原菌が流行しており、各地で希少両生類が絶滅の危機に陥っているとされます。2006年に日本国内でも、ペットとして飼育されていた南米産ベルツノガエルへの感染が確認され、カエルツボカビが日本に上陸したことで日本の両生類が絶滅するのではないかと危惧されました。
しかし、筆者ら研究チームが調査した結果、この病原菌の起源が実は日本にあり、菌と長きにわたって互いに影響しながら進化するという「共進化」の結果、ツボカビ菌に対して日本の両生類は抵抗性を身につけていることが示されました。日本から食用のウシガエルやペット用のイモリ類が輸出されたことで、菌が海外に持ち出され、抵抗性のない海外の両生類の間でパンデミック(世界的大流行)が引き起こされたものと考えられています。
受粉で活躍するはずが…花粉以外も運んだマルハナバチ
1980年代にヨーロッパ産のセイヨウオオマルハナバチというハナバチが、ハウス栽培トマトの花粉を媒介する農業資材として開発されて以降、オランダやベルギーの工場で大量生産された人工の巣が世界中に流通し、日本も92年から農業用に導入を開始しました。ところが、ハウスから逃げ出した個体が野生化し、北海道を中心に分布拡大を続けています。
セイヨウオオマルハナバチは営巣場所をめぐる競争で日本在来のマルハナバチを駆逐するとともに体内寄生の外来ダニを持ち込んで在来マルハナバチにも水平感染させることが明らかとなり、外来生物法の規制対象種である「特定外来生物」に指定されました。
そこで、代わりの昆虫として日本のマルハナバチを利用することが提案され、多数の日本産マルハナバチの野生女王蜂が日本用の人工コロニー生産のためにヨーロッパの生産工場へと輸出されました。すると、この日本産女王蜂に日本のダニが寄生していたため、ヨーロッパのマルハナバチ生産工場内に日本のダニが持ち込まれて蔓延(まんえん)するという事態が起きました。
ヒアリも原産地では「いじめられっこ」だった
日本国内では、外国産の外来生物が繁栄するのを見て、「やはり外国の生物の方が日本の生物よりも強いから、日本の生物が負けてしまうのだ」と思う人も少なくないと思われます。しかし、これまで紹介してきたように日本国内では地味に生きている動植物あるいは微生物でも、一旦海外の新天地に持ち出されるとそこにすむ外国の生物たちを蹴散らし、「強い外来生物」として猛威を振るっているのです。同様に日本で猛威を振るう外国産の外来生物たちも原産地では意外なほど弱い存在で見つけるのが困難なほどひっそり生きていることが多いのです。
カエルツボカビを例にとれば日本国内ではこの菌は日本産両生類のごく一部の種に低頻度でしか寄生しておらず、カエルやイモリの体全体に感染が広がるケースはほとんどありません。これは日本の両生類はカエルツボカビ菌との共進化を経ているので菌に対する免疫機能を発達させており、感染したとしても足先などの体のわずかな部分にしか寄生が起こらないからなのです。また、日本の野外環境には多様な菌類・細菌類が競合種あるいは天敵種として生息しており、カエルツボカビの「独り勝ち」を許しません。そんな日本の環境でひっそり生きていたカエルツボカビ菌も海外に渡った途端、競合する菌類がいない環境と免疫のない両生類という絶好の繁栄条件に巡り合うことで、パンデミックを引き起こすことになったのです。
昨年から日本への「侵入」が発見されて話題になっているヒアリは強い増殖力と攻撃性が特徴とされ、その侵入と分布拡大が世界中で恐れられていますが、本種もまた原産地のブラジル・アマゾンでは数多くいる競合種や天敵種によって資源が豊富なジャングルから追い出されて河川敷で洪水や氾濫のリスクにさらされながら、ひっそりと生息していることが知られています。競争相手や天敵から解放されて、新天地の市街地や公園でのびのびと生きている外来ヒアリの姿は、さながら「いじめられっこ」だらけの学校から越してきて、新しい学校でいきなり才覚をあらわし、「番長」にのし上がった転校生のように映ります。
無関心ではいられない、外来生物の「輸出」
すべての生物には本来の生息地があり、その生息地固有の環境で様々な生物同士が共進化を経て、競合・捕食・寄生など多様な生物間相互作用によってバランスが維持された生態系を構成しています。外来生物とは、共進化の歴史からかけ離れた生物移送を人間がもたらし、生態系のバランスを崩すことで生み出される“人為的な”問題なのです。
経済の国際化が進む中で、すべての国が外来生物の被害を受ける立場と被害をもたらす立場の両方に立っています。今後、外来種の拡大を防ぐためにも、「自国に入れない」という対策のみならず、「自国から出さない」という対策を各国で進めていくことが重要ですが、国家間の経済競争が激化する現在、いずれの国もわざわざ輸出相手国の利益を守るために、外来種の持ち出し防止にコストをかけようとは思わないことでしょう。
例えばヒアリはコンテナなどに紛れて持ち込まれるケースがほとんどであり、輸出国サイドで出荷前にコンテナの検査・管理を徹底するだけでも、このアリの持ち出し・持ち込みリスクは大幅に低減すると思われますが、どの国もそんな手間をわざわざとってくれません。
しかし、一方でこのまま各国からの外来生物の「輸出」を放置し続ければ、世界全体の生態系システムや社会システムに障害が生じて、結果的には各国の経済成長が妨げられることにもつながると考えられます。生物多様性の保全という観点からのみならず、世界経済の持続的な発展および維持のためにも、すべての国が外来生物の輸送に対して責任を負う必要があり、今後、「外来生物条約」ともいうべき国際的な規制の枠組みが実現されることが望まれます。
意図して持ち込んだものが繁殖してしまうという例はアメリカザリガニや食用ガエル、ソウギョ、ライギョなど枚挙にいとまがないが、物の移送が世界規模で大量に行われる時代になるとそのものに紛れて海外へと出て行く生物、入ってくる生物が多くなる。ジャパニーズビートルは聞いたことがある。以前はずい分見かけたが最近はあまり見なくなった。葛は日本でも大繁殖している。恐るべき速度で他の植物を覆い尽くしていくので調べてみたら葛粉で知られた葛だった。あんなものを持ち込めば手に負えなくなるのは分かりそうなものだが、日本でもそうした例は数多あるからなあ。ワカメも聞いたことがある。これは船のバラスト水に奉仕が紛れ込むようだ。両生類に付くカビの話も聞いたことがある。日本のカエルが絶滅するとか言っていたが、原産地には様々天敵がいるようでバランスが取れているが、新天地には天敵がいないと大繁殖することもあるだろう。食用その他に利用しようと持ち込んだ生物が大繁殖する場合もある。ペットなどは飼えなくなったら処分すべきだろうけど自然界に放してしまうととんでもないことになる。アカミミガメ、アライグマ、カミツキガメ、その他諸々だが、やはり生物の管理は厳格の行わないととんでもないことになる。では、人間は、・・これも世界中で人の移動が活発になり過ぎて大問題になっているが、人間ばかりは駆除とか言うわけにはいかないので入国を規制するなどの方法によることになるが、欧米では「多文化共生は痴人の夢」などと言われているように移民では痛い目に遭っているようだ。日本も他人事ではないが。これもなかなか悩ましい問題ではある、・・(^。^)y-.。o○。
日本ブログ村へ(↓)