クルマを運転するときに欠かせない装備が、速度やガソリン残量などを示す「メーター」です。そんなメーターにもいろいろな色が使われています。なかでも、いちばん印象が強い色は「赤」なのかもしれません。赤は刺激的な色であり、強い印象を与える効果もありますが、どうして強い印象を持つ赤色がメーターの色に使われるのでしょうか?
その理由を考えるヒントとなるのは、クルマにとって「赤」がどんなイメージなのかを考えるといいでしょう。古い話になりますが、1990年代に大ヒットしたモデルに、ホンダの「タイプR」シリーズがあります。
「NSX タイプR」にはじまり「インテグラ タイプR」、そして「シビック タイプR」と続いたこのシリーズのイメージカラーは白でしたが、アクセントカラーとして赤が使われていました。
エンブレム、ステアリングなどのステッチ、そして選択によってはシートやフロアカーペットまで赤をコーディネート。ホンダの「タイプR」シリーズは、「公道も走れるサーキット仕様」と定義づけられたリアルスポーツカーであり、スポーツカーといえば「赤」というイメージを決定的にしたシリーズと言えるでしょう。
とはいえ「赤=走りの情熱」は「タイプR」シリーズがはじめたものではありません。さらに時代をさかのぼれば、日産のR30型「スカイライン」に用意されていた「RS」は「レーシングスポーツ」を意味するスポーツグレード。エンブレムには赤が添えられ、搭載するFJ型エンジンのヘッドカバーには真っ赤な結晶塗装が施されていたのです。
これも「赤」を走りのイメージを連想させる色として使っていた例です。クルマにとって赤は走りの情熱をイメージさせる、レーシングスピリットの象徴なのです。
さらにいえば、赤は刺激を感じさせる色なので、特に夜間などは目の覚醒を促して疲れやすくなる可能性も否定できません(この対極にあるのが、かつてボルボやサーブに備わっていた、最小限のメーター以外はインパネの照明を消して夜のドライブで疲れにくくする機能です)。
見方を変えれば、そんなデメリットがあるからこそ多くのクルマに広まることがなく、特別なイメージを演出できるのが「赤」というメーター色と言えるのかもしりません。
従来よく照明色として使われることが多かったのはアンバーでした。その理由は二つあります。ひとつは電球色そのままなので構造がシンプルでコストがかからなかったこと。もうひとつは目に優しくて疲れにくい色だったからです。また、赤の警告灯が光ったときに目立つのもメリットといえるかもしれません。
また近年、従来は用意されなかったブルーやグリーンといったメーター照明も見かけるようになりました。これはエコをイメージした演出で、ハイブリッドカーや走行モードを「ECO」に切り替えた時に変化するメーター色としても使われることが多いです。
スポーツモデルがひと昔前に比べるとかなり減った今、赤色メーターの採用モデルも非常に減っています。今後は色を自由に設定できるフル液晶メーターも採用車種が増えつつあり、メーターの照明色の独自性は薄まる傾向にあります。しかし、メーターの色でクルマのキャラクターを示す遊び心は、失ってほしくない気もします。