移設に反対し、翁長雄志知事の支援を受けた現職・稲嶺進氏が、移設を推進する政府・与党の支援を受けた新顔の渡具知武豊氏に破れた。米軍ヘリのトラブルや、沖縄担当大臣の「ヤジ」をめぐる辞任などを受け、政府側にとって逆風が吹くなか、接戦となった選挙戦。得票数は稲嶺氏が16,931票、渡具知氏が20,389票。投票率は76.92%だった。2月5日は休刊日だったため、東京管内で夕刊を発行している5紙を比較しました。
読売新聞は1面と3面で展開。「政府・与党では移設計画の進展に期待が高まっている」と紹介し、選挙を「今秋にも行われる県知事選の前哨戦とされる市長選を制したことで、辺野古移設が最大の争点になる見込みの知事選に弾みがついた」と指摘した。渡具知氏に関しては「国と県の訴訟が係争中として、受け入れの是非に言及せず、国の支援を受けて地域振興に取り組む姿勢を強調した」と紹介。「政府が選挙の期間中も辺野古での護岸移設工事を続けたことで、地元市民には『市長では工事は止められない』との見方が広がった」との見解も示した。
一方、翁長知事については「知事選に向けた戦略の見直しが迫られそうだ」と言及。「争点外しもあったが、(今後については)相談しながらやっていきたい」というコメントも紹介した。また、稲嶺市政時代に交付が止まっていた、在日米軍再編で負担が増える自治体に渡される交付金(これまでの不交付分計約135億円)の再開を政府が検討し始めたことにも触れている。
一方、翁長知事については「苦しい立場に立たされる」と言及し、「争点外しをされたというのは残念だった」との発言を紹介した。また、選挙翌朝の基地建設現場での座り込みの様子について、「移設反対 『諦めない』」との記事も掲載している。
毎日新聞は1面と社会面で展開。「移設をめぐる県と政府の対立を反映した選挙戦となった」とし、渡具知氏の勝因については「移設の是非を明言しない戦略を徹底して経済振興策を訴えた」とした。「市議時代には移設に理解を示した渡具知氏は事実上の移設容認の立場とみられ、政府は移設計画を加速させる方針」とする一方、翁長知事については、「地元の反対という『民意』を失い」「大きな打撃となり、求心力の低下は避けられない」と指摘した。社会面では、稲嶺氏の「辺野古移設問題が争点となりえなかった。(中略)はぐらかされてしまった」というコメントを見出しに引用。今回の選挙について、「護岸工事が始まるなど辺野古の海が変容していき、市民の間に『移設工事を止められないのでは』というあきらめに近い声がで始めた中で迎えた市長選だった」との見方を示している。
東京新聞は1面、2面、社会面で展開。解説記事も掲載し、結果は「有権者の期待の表れ」としながら、渡具知氏が基地問題に触れていなかった点に言及し、「政府が建設推進への『白紙委任状』を得たわけではない」と釘を刺した。一方、情勢については、「経済活性化と政府・与党との近さを強調する戦術が奏功した」との見方を示したほか、工事が進んでいるなかで、市民の間に「分断疲れや無力感が広がった」ともしている。
また、公明党が渡具知氏を推薦したことに触れ、「支持団体の創価学会が組織力を発揮したことで、接戦が予想された選挙戦を制した」とも分析した。翁長知事については、求心力低下や知事選の影響に触れながら、「争点外しがあった」というコメントも引用している。
翁長氏の「争点を外され残念だった」とのコメントを引用。地元有権者の意見については、「地域活性化への期待の声が上がる一方、基地問題への対応を不安視する声も聞かれた」と紹介している。