「副室長はどうですか、この件については、・・。何か意見はありますか。」
社長が女土方にそう聞いた。
「仕事の点では全く問題はありません。あとは社の体面や本人がどうかですがそれは会社の方でご判断をお願いします」
女土方はさすがに優等生的な答え方をした。
「佐山さん、まさか本当に押さえつけて見たわけじゃないだろうね。まさかとは思うが一応念のために、・・。」
社長がまたわけの分からないことを言い出した。今度は北政所様が吹き出した。
「まさか、・・。本人に訳を話したら見せてくれました。」
「そうなんだ。まあ女同士だから問題はないだろうけど場所が場所だからあまり過激なことはね、・・。」
社長がそう言うと今度は全員が吹き出した。人に変なことを言いつけて散々苦労させておいてこいつらとんでもない奴らだ。みんな押さえつけて確認してやろうか。
「じゃあ、ちょっと本人にも確認しておこうか。副室長、呼んでくれるかな」
社長はまじめな顔に戻って社長らしいことを言った。女土方が電話をするとすぐに知的美人がやって来た。昨日とは打って変わって金属のような感情の欠片もないような表情はいつもの彼女だった。
「どうぞかけてください」
社長はたまたま空いていた僕の隣を指示した。知的美人が腰を下ろすと社長は僕と知的美人を交互に見てちょっと表情をゆがめたが、何とか踏み止まったようだった。
「あなたのことは佐山先任から聞きました。一応確認しますが、アダルトに出演していたというのは事実ですね」
社長は結構真顔を作ってそう言った。
「はい、昨日、佐山さんに話した通りです」
知的美人はほとんど表情を変えずに答えた。
「それはそれとして佐山先任はあなたの能力を高く評価している。仕事を進めていくうえでぜひ必要な人材だそうだ。そうした優秀な人材は会社としてもぜひそのまま能力を発揮していただきたい。しかしながら、・・だ、当社の業務からすればあなたのしていることは好ましいとは言い難いものがある。そこでだ、もう出回っているものは仕方がないが、今後は一切その手のものには手を染めないことを条件に身柄を佐山先任に預けるということで仕事を継続してもらうということでどうだろう。他人の空似と言うことにしておけば人のうわさも75日と言うからその手の話も時間とともに下火になるだろう。それからメンタル面のケアも受けてもらいたい。病院はこっちで紹介するから。どうだろう。」
知的美人は黙ってうつむき加減に社長の話を聞いていたが、答えを求められると「そのまま置いていただけるというならありがたくお受けします」と答えた。
社長はにっこり微笑んで「では、そういうことで。今回の処分は社長注意と言うことで。」と締めくくった。
ところが何か忘れたように、「あ、一つ言い忘れた。佐山君はとてもやさしい優秀な社員だが、やり方にちょっと強引なところがある。悪気じゃないんだけど誰にもそうなんでそこのところを了解しておいてほしい」と言った。
それを聞いて北政所様と女土方が『もう耐えられない』と言った風情で笑い出した。知的美人は僕を振り向くとちょっと口をゆがめるようにして笑った。憮然としているのは僕だけだった。
日本ブログ村へ(↓)