「もう帰るのって一体何するのよ。あなたはノーマルでしょう」

僕がそう言うと知的美人は首を振って「ここに来て」と言った。まあそこから先は二人の個人的なことなので何があったかは省略させてもらおう。そしてまあそれなりに時間が経過して僕が体にタオルを巻いて缶ビールを飲みながら
『遅くなってしまったなあ。そろそろ帰らないと、・・。』などと考えていた。

「ねえ、帰るの。今日泊まっていけないの。」

後ろで知的美人のすがるような声がした。

「そんな支度はしてこなかったし今日は無理ね。もう遅いんでそろそろ失礼するわ。」

「そう、分かったわ。」

ちょっとトーンの下がった知的美人の声が聞こえた。

「ねえ、あなたって本当に不思議な人よね。あなたって体は全く普通の女だったわ。でも、どうして私の男を求める触角が反応するのかしら。それが何とも不思議だわ。今も激しく反応しているの、このままそばにいてって、・・。どうしてなんだろう。こんなこと一度もなかったのに、・・。」

そう言いながら不思議がる知的美人をしり目に僕は着替えを始めた。でもこの女の本能は僕の奥底の琴線に触れて僕が男だということを感じているんだろう。恐るべし、女の本能、・・。

「ねえ、今日は帰るけど大丈夫よね。それから明日は必ず出勤してね。あなたに話を聞かないといけないことが出てくるかもしれないし、社長や室長が会いたいと言うかもしれないからね、いいわね。お願いよ。」

知的美人はもう起き上がってタオルを巻いた格好でビールを飲んでいた。帰り支度を終えて「じゃあ帰るね。」と言っても例の金属のような冷たい態度で振り向きもしなかった。知的美人の家を出ると大通りまで出てそこでタクシーを拾った。もう時間も遅くて電車で帰るのも面倒だった。

車内から『帰る』とメールを送ると女土方から『お泊りかと思ったわ
』と返信があった。それなら泊まってもよかったんだけどさすがに着替えも何もないんではばかられた。


家に帰ると女土方は一言、「お疲れ様」と言った。これって単純に解釈すれば定型的な挨拶だが考えようによってはかなりとげのあるというか、引っかかりのある言い方だと思った。クレヨンは、「どうだったの、どうだったの」と好奇心丸出しだった。僕は一言、「認めたわよ」と答えた。そして「ただちょっと事情があるようなので、・・どうしようか。明日話そうか」と言うと女土方が「今聞いておきたいわ」と言うし、クレヨンは、「何々、何の事情なの」と首を突っ込んでくるので「分かったわ。」と言ってコーヒーを持って来させるとさっき知的美人から聞いたことを掻い摘んで話した。


「そうなんだあ、あの女、あんなに冷たい顔して男依存症だったんだ。」


クレヨンがそう言うので僕は「あんたもそうだったでしょう。個人情報なんだから余計なことを言うんじゃないよ」とくぎを刺しておいた。



「自分だって結婚したり離婚してほかの男とくっついたり似たようなものでしょう。」


クレヨンが憎まれ口を聞いたので僕はとびかかって押さえ込んで「さあ、それじゃああんたの言う男狂いの技を思い切り見せてやろうかしたねえ」と言って体をあちこちまさぐってやったらクレヨンのやつ、息も絶え絶えに「ごめんなさい、もう言いません。」と悶えながら言うので放してやった。


「もう男狂い、女狂いの変態女、・・。」と言って部屋の隅に退避した。



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