自衛隊が宇宙監視任務に乗り出す。日本の防衛やインフラに欠かせない人工衛星が宇宙ごみ(スペースデブリ)と衝突するのを防ぐことを前面に掲げつつ、中国のミサイルなどの衛星破壊兵器による攻撃から防護することも主眼に置く。自衛隊にとって初となる宇宙監視部隊の創設構想は曲折を経てきたが、米政府の期待も大きく、「日米vs中国」の構図で宇宙戦に突入する。(社会部編集委員 半沢尚久)

 
■5年越しの検討

防衛省は8月、航空自衛隊に宇宙監視の専門部隊を新設することに向け、専用地上レーダーなど監視システムの設計費を平成30年度予算案概算要求に盛り込んだ。

本来、空自の地上レーダーは領空に接近してくる外国航空機や弾道ミサイルの飛来を探知・追尾するのが役割だ。それを宇宙監視に転用する構想が浮上したのは平成24年にさかのぼる。

 「(宇宙で)協力深化の作業を進めている」

同年9月の日米防衛相会談後の記者会見でパネッタ米国防長官(当時)はそう強調し、日米両国が重視すべき協力分野として宇宙を挙げた。事前の外務・防衛当局の審議官級協議で日米が宇宙分野でどのように連携できるか議論した上での発言だった。

そのとき、すでに空自が運用する地上レーダー「FPS-5」を宇宙監視に活用する案が具体化していた。なぜ、そのような案が持ち上がったかといえば、きっかけは偶然の産物だった。さらに3年さかのぼった21年4月。北朝鮮が弾道ミサイルを発射した際、警戒にあたっていたFPS-5が衛星の航跡をたまたま捕捉したことがあるのだ。空自幹部は「FPS-5が宇宙監視に使えるのかと驚いた」と振り返る。

 
■日米の片務性

21年の時点で、宇宙ごみと衛星破壊兵器の脅威は顕在化していた。中国が19年にミサイルで自国の衛星を破壊する実験に成功し、約3千個の宇宙ごみを発生させていたからだ。

ただ、当時の政府内の空気はFPS-5の宇宙監視への転用に前向きだったとはいいがたい。そもそもFPS-5は海上自衛隊のイージス艦とともに弾道ミサイルを探知・追尾するレーダー網の中核で、それを「他の任務に回す余裕はないとの声が多かった」(空自OB)という。そのため、24年まで構想が具体化することはなかった。

それに対し米軍は宇宙監視態勢を着実に築いていた。光学望遠鏡とレーダーの地上システムで衛星や宇宙ごみを観測し、24年前後には観測地点は世界15カ所以上に上り、宇宙ごみを監視する衛星も打ち上げていた。

日本では財団法人「日本宇宙フォーラム」が光学望遠鏡とレーダーで宇宙監視を行っているが、政府高官は「米国の情報に依存している」と明かす。この分野でも日米の「片務性」が存在することを示している。

米軍の危機感が強いのは、衛星が破壊兵器の攻撃を受ければ作戦能力が著しく低下してしまうためだ。衛星による軍事偵察や、衛星利用測位システム(GPS)を駆使する精密誘導兵器は米軍の特長だが、衛星が破壊され機能を失えば、そうした米軍の強みは弱みへと一転する。

それは程度こそ違えど自衛隊にとっても同じだ。通信衛星やGPSが破壊されたり機能しなくなったりすれば、自衛隊の部隊と装備の運用は壊滅的なダメージを受ける。 であれば、日米の片務性を解消するのは当然だ。

 
■中国は7月にも実験か

停滞期間を経て、24年の日米防衛相会談を機に宇宙分野での協力深化が公式に表明されると片務性の解消に向けた動きが加速する。

 「宇宙状況監視の取り組みを通じて衛星の抗たん性を高め、…米国との有機的な連携を図る」

政府は25年に策定した防衛力整備の基本指針「防衛計画の大綱」でそう明記し、自衛隊が重視すべき能力として宇宙監視による人工衛星の防御能力向上を挙げた。防衛大綱で宇宙空間に関する項目を設けたのは初めてだ。

防衛大綱に呼応させるように、27年に改定した「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」も宇宙の項目を初めて盛り込み、「おのおのの宇宙システムが脅威にさらされた場合、自衛隊と米軍は危険の軽減と被害の回避に協力する」と特記した。

宇宙を監視するレーダーについては、防衛省は当初検討したFPS-5の転用ではなく、新規に専用レーダーを開発すると結論づけた。レーダーにより宇宙ごみや衛星破壊を狙う不審な物体の接近を監視し、衝突する危険性があれば衛星の軌道を変更して回避させる。

レーダーは35年度からの運用を目指しており、防衛省幹部は「米国などと連携し、全世界の上空の情報を共有できる態勢を構築しなければならない」と指摘する。

一方、「宇宙強国」への野望を抱く中国は今年7月にも衛星を破壊するためのミサイル発射実験を行っていたことが米ニュースサイトで伝えられた。ミサイルに加え、衛星に近づいて爆薬で破壊したり、レーザーで無力化したりする衛星破壊兵器の開発も進めている。

それを踏まえれば、空自の新部隊はレーダーだけにとどまらず、さらなる対処力の開発と運用に踏み込むときがくるだろう。


うーん、前回も書いたが、航空自衛隊も宇宙航空自衛隊と改名しないといけないな。米国と共同で往還型の宇宙船を作って宇宙パトロールをしてキラー衛星を破壊するとか、もう本当にスターウオーズの世界だな。弾道弾防衛システムだの水陸機動団だの宇宙軍だの金がかかることはいっぱいで大変だ。防衛費もGDP2~3%くらいにしないといけないな。それにしても日本のレーダーって性能がいいんだな。


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