◆陸上 日本学生対校選手権第2日▽男子100M決勝(9日、福井県営陸上競技場)

 
日本初の9秒台を達成した桐生祥秀(21)=東洋大=は、左太ももに不安を抱えて今大会に臨んでいた。「出ない」はずの試合で快挙が生まれた裏には、桐生ならではの走りの“特性”があった。


号砲の瞬間、息をのんだ。不安を抱えていたはずの桐生の左脚が、力強くスターティングブロックを蹴っていた。先行する多田をまくったピッチの回転を見ても、4時間前の200メートル予選で自己記録より1秒も遅い21秒41だった姿とはかけ離れている。前日の8日には出場自体も危ぶまれ「力が入らなくてスタブロが蹴れない。けがなく終われればいい」と話していたはずが、「肉離れしても行かないと。けがしても良いくらいの気持ちだった」と笑っていた。

1日たって、まるで別人。この裏に、桐生の底知れない強さの秘密がある。土江コーチは常日頃「リミッターが外れた桐生は本当に強い。魂で100メートルを走るタイプですから」と形容する。まるでゲームの主人公が変身でもするように、条件がそろった時に限界を超えて自分を追い込めるスプリンターの本能が備わっている。これが、立ちはだかった壁を破るラストピースだった。

では、なぜ今リミッターは外れたのか。桐生は東洋大での4年間、100メートルと200メートルで1度も自己ベストを更新していないのが負い目だった。土江コーチや後藤トレーナーに感謝を示すラストチャンス。「桐生が東洋大のみんなを救ってくれた感じがする」と土江コーチはねぎらった。そしてもう一つ。第3レーンに、6月の日本選手権で敗れた多田がいた。当時日本歴代2位の記録を持ちながら、世陸の個人切符を逃した屈辱がよみがえった。「ここで負けたら、負け癖がつく」。我を忘れ、1本に込めるには十分すぎた。


桐生ってここ一番で負けてはなくべそかいたり力はあっても精神的に弱いのかなと思っていたが、今回は気合が入ったようだ。100メーター9秒台は遅かれ早かれ誰かが出すとは思っていた。この記録もすぐに破られるだろう。100で世界のファイナリストになるにはコンスタントに9秒8台を出さないといけないそうだ。100メーター9秒台に入った日本だが、世界の壁はまだまだ高い。


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