今月初旬、海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」が、安全保障関連法に基づく「米艦防護」を米海軍補給艦に対して実施したことが大きなニュースになった。海自護衛艦が平時から米艦を守り、攻撃を受けた際には武器使用の制限付きながら反撃できる“平時の集団的自衛権”の初適用は、日米同盟が新たな段階に至ったことを象徴する出来事だった。政府は公式に事実関係を発表していないが、栄えある任務のトップバッターに海自最大の新鋭艦であるいずもが選ばれたことは偶然ではないだろう。

 
実はその後、いずもと合流する形で、もう1隻の護衛艦が米補給艦の防護に加わっている。今回、主役として取り上げる護衛艦「さざなみ」だ。米艦防護の実施順では2番目になったが、「戦後初」の任務を少なくとも2回成し遂げ、その名を海上自衛隊の歴史に刻んでいる。

 
「たかなみ」型の4番艦として平成17年2月に就役。全長151メートル、幅17・4メートルで約170人が乗り組む。主砲の127ミリ速射砲や対空・対潜ミサイルを備えるほか、哨戒ヘリコプター1機も運用可能で、対空・対潜などオールマイティーに力を発揮する。同型艦4隻とともに海自の中核を担う働き盛りだ。 さざなみの「戦後初」のその1は、平成20年6月にさかのぼる。海自の護衛艦として、初めて中国を親善訪問したのだ。

 
中国海軍の南海艦隊が司令部を置く広東省・湛江(たんこう)港に入港したさざなみは、同年5月の四川大地震への見舞品として毛布や非常食を贈呈。中国側の約400人の兵士に出迎えられ、司令官からは「さざなみは平和の使者、友好の使者だ」と歓迎のあいさつを受けた。

 
軍隊の役割は外敵と戦うことだが、平時では「外交」も重要な仕事となる。緊張関係にある他国の軍とも一定の信頼関係を築いておくことは、偶発的な紛争を防ぐためにとても重要なことだ。ちなみに中国への親善訪問はさざなみ以降、23年12月に護衛艦「きりさめ」が青島港を訪れただけで、今だにレアケースだ。

 
もう1つ、さざなみの誇る「第1号」はアフリカのソマリア沖海賊対策だ。護衛艦「さみだれ」とともに第1次隊に選ばれ、平成21年3月から7月までの間、ソマリア沖で警護活動に従事した。

 
任務開始から間もない同年4月3日には、シンガポール船籍のタンカーから「海賊らしい小型船に追われている」と救援を求められ、現場に急行。「こちらは海上自衛隊だ」と不審船に呼びかけ、サーチライトを照射するなどして追い払った。邦人の保護ですら外国に頼ってきた日本が、「人類共通の敵」といわれる海賊への対処作戦に参加し、航行の安全確保に確かな実績を挙げたのはエポックメーキングな出来事だった。

 
「ソマリア沖への自衛隊派遣は海賊対策を口実にした海外派兵であり、憲法違反だ」。当時も今も、そんな批判をする人たちがいるが、さざなみとさみだれが、派遣に反対していた民間国際交流団体「ピースボート」の船舶すら護衛したことは特記すべき事実といえるだろう。2隻は日本関係船舶を41回、外国船舶を6回警護して任務を終え、国際的に高く評価されるソマリア派遣の歴史を切り開いた。その後もさざなみは2度にわたりソマリアへ派遣され、貢献を重ねている。

 
さて、話を平成29年現在に戻す。さざなみといずもは米艦防護を終えた後、南シナ海を南下し、15日にシンガポールで開かれた同国海軍創設50周年を記念する国際観艦式に参加した。いずもにとっては海外でのお披露目となる晴れ舞台。この観艦式に参加した艦艇の中では最大とあって、大いに注目を集めたことだろう。しかし、さざなみも決して脇役ではないことは、これまでの実績が証明している。(政治部 千葉倫之)


紛争地域の邦人救出に「民間航空会社に救出に行ってくれ」と言う平和国家と称する日本だが、自衛隊も誰であろうと分け隔てなくしっかりと守ってやるのだから立派なものだと思う。法的な制約から普通の国の軍隊とは違っていろいろと不自由な点もあるだろうけどこれからも天下国家と国民のために頑張ってほしい。日本もまだまだ大丈夫、捨てたものじゃない。


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