「トムキャット」の生き残りはイランで独自進化?
 
メディアが2017年5月23日(火)に伝えたところによると、1986(昭和61)年に公開された映画『トップガン』の続編が来年にも製作開始されるそうです。かねてより『トップガン2』が制作されるという噂はありましたが、前作において主人公のマーベリックを演じたトム・クルーズさんがこれを認めたとのことです。熱烈なファンが多い作品だけに、待望の次回作となるかもしれません。


前作『トップガン』にてマーベリックの乗機となったのは、アメリカ海軍のグラマン社製F-14「トムキャット」艦上戦闘機でした。映画公開から30年が経過するいまもなお、F-14はとてもカッコいい機種として大人気ですが、現在F-14はどのような境遇にあるのでしょうか。

 
結論から言うと、F-14は2006(平成18)年にアメリカ海軍から全機が退役してしまいました。F-14は、試験において200km先の目標を撃墜したことさえある長射程AIM-54「フェニックス」空対空ミサイルの搭載能力を持ち、デジタルネットワークによる戦術情報の共有が可能であるなど、2017年現在の水準においても非常に高い性能を有する「艦隊防空戦闘機」でしたが、1991(平成3)年のソ連崩壊による冷戦の終結後は、とびぬけて強すぎるアメリカ海軍とF-14の敵となる存在が消えてしまったため、その活躍の場がなくなってしまったのです。

 
ですがF-14唯一の輸出先となったイラン空軍においては、いまだ現役です。イラン共和国といえば、アメリカとは非常に険悪な関係であったことが知られる中東の大国です。


なぜイランでのみF-14が現役なのか
 
現在でこそアメリカ・イラン関係の改善は進んでいますが、そのイランがなぜF-14を持っているのかというと、1970年代当時、「イラン帝国」と呼ばれていたころは親米的な政策を堅持していたからです。

 
1970年代、イラン空軍次期主力戦闘機の主要候補はF-14とF-15でしたが、帝国の支配者であったシャーハンシャー(「諸王の王」、すなわち「皇帝」を意味する称号)、モハンマド・レザー・パフラヴィー(パーレビ国王)自ら渡米し両機を調査、最終的にはレーダーやミサイルの性能に優れるF-14が勝者となります。

 
またモハンマド・レザー・パフラヴィー帝は大変な戦闘機マニアで知られており「F-14は彼の好みだったので勝者となった」という面白い俗説もあります。

 
そして79機のF-14がイランに引き渡されたところで1979(昭和54)年にイラン革命が発生、帝国は崩壊しイラン共和国が成立します。同年、モハンマド・レザー・パフラヴィー帝とその家族がアメリカへ移ったことに端を発する「在イランアメリカ大使館人質事件」が発生。これにより、イランとアメリカの関係は決定的に悪化し、その結果、F-14はアメリカからの技術的なサポートが一切受けられなくなり、部品の供給もストップしてしまいます。

 
困ったイランはF-14を持て余してしまいますが、のちに部品やミサイルの独自国産化や技術開発をすすめ、F-14を独自に改造・改良し自分たちのモノにすることに成功。その結果、最大の見積もりで推定40機程度のF-14が現在も生き残っているとされています。

 
最近では、ISISへ爆撃に向かうためにイラン領空を通過するロシア軍爆撃機をエスコートするF-14の姿が公開されており、その健在ぶりを強く世界に印象づけました。


本家アメリカをはるかにしのぐ大戦果

『トップガン』のクライマックスシーンにおいて、マーベリックは多数の敵戦闘機を撃墜する戦果をあげましたが、実際のアメリカ海軍におけるF-14の撃墜戦果は戦闘機4機とヘリコプター1機だけでした。

 
かたやイラン空軍のF-14は、1980(昭和55)年から1988(昭和63)年まで続いた泥沼のイラン・イラク戦争において、イラク空軍機を159機撃墜ともいわれる大戦果を挙げ、100km遠方からまさにワンサイドゲームで攻撃してくるF-14は、イラク空軍を恐れさせました。マーベリックをはるかに上回る11機を撃墜したイラン人エースも誕生しています。

『トップガン』と言えばF-14であるというファンも少なくないようです。歴戦の勇者であるイラン空軍のF-14を主役として出演させてほしい、無茶だとわかっていてもそう感じざるを得ないのは筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)だけでしょうか。


F14は旧ソ連の長距離対艦ミサイルによる飽和攻撃から艦隊を防護する艦隊防空戦闘機として開発配備された。そのためにフェニックスと言う射程200キロの長距離防空ミサイルと複雑高価なFCSを装備して24目標を追尾し、そのうち脅威度の高い6目標に同時にミサイル攻撃をかけることができるのが売りだった。戦闘機と闘って勝つために設計されたF15とはちょっと異なる戦闘機だった。エンジンもF111に装備されたTF30という最新とは言えないエンジンを装備し、後日、最新型のF401エンジンとFCSに換装しようとしたF14B、F14Cはエンジンの開発が遅延しているうちにソ連が崩壊して機動部隊に対する脅威がなくなったことで新規製造は言うまでもなく現有機の維持管理にも莫大な金と手間がかかるF14は用途廃止になって金のかからないF18と入れ替えられてしまった。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったF15に対し、エンジンのパワーで劣るF14が異機種格闘戦を挑んでF15絶対有利と言われた低空の格闘戦で可変後退翼の強みを生かしてF15を圧倒し、海軍のパイロットに「思い知ったか」と胸を張らせたとか、・・。イランはF14の再生に八方手を尽くして部品調達を行ったらしいが、デジタル化されていない高度なミサイル迎撃システムを再生して現在も維持しているならそれはそれで大したものではある。


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