政府が進めてきた海上自衛隊の救難飛行艇「US2」のインドへの輸出交渉が暗礁に乗り上げていることが30日、分かった。インド政府との交渉開始から約5年たつが、機体価格の高さなどを理由にインド側の熱意が冷めつつあり、頓挫する恐れが出てきた。平成26年4月の防衛装備移転三原則の閣議決定で防衛装備品輸出に道を開いたが、大型輸出案件はゼロで、体制の見直しが迫られそうだ。

 
飛行艇は海面にも着水でき、US2は航続距離が長く外洋で運用できる唯一の飛行艇。波高3メートルの荒れた海に着水可能だ。新明和工業(兵庫県)が製造した。

 
インドが導入に関心を示し、政府は24年ごろから輸出の検討を始めた。武器輸出三原則の下、輸出が事実上全面禁止だったため防衛機材を外した民間飛行艇として輸出する計画だった。

 
防衛装備移転三原則への転換により安全保障で協力関係にある国に救難用などの装備品輸出ができるようになり、US2はそのまま輸出可能になった。日印首脳会談や防衛相会談ではUS2の輸出計画を進展させる方針を確認してきた。

 
ところが今月8日の防衛相会談では稲田朋美防衛相がUS2の導入決定に向け手続きの加速を求めたところ、インドのジャイトリー国防相は返答しなかった。

 
US2の輸出交渉が難航している最大の理由は1機当たり百数十億円に上る価格で、インドはロシアとカナダの飛行艇の導入を比較検討しており、価格は30億~40億円と安い。インド海軍では高性能のUS2導入に期待が根強いが、国防省全体では導入決定を見送る状態が続く。日本政府内では「インドのニーズや意思決定の複雑さを把握できておらず、政府も企業も経験不足だ」(高官)と指摘される。


武器輸出は単純にいいものは売れるという図式は当てはまらない。日本のように顧客はお上で作ったものは原則必ず買ってくれるという商売をしているとお互いに分からなくなってしまうのかもしれないが、性能、コスト、維持管理をどうバランスさせるかが重要だろう。武器輸出は商売であると同時に政治であり外交でもある。この辺りの感覚を磨かないとなかなか海千山千のひしめく武器輸出の世界で勝ち抜くのは難しいだろう。


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