北朝鮮が6日に発射した弾道ミサイルが最も日本本土に接近した可能性があることが判明したことで、ミサイル防衛(MD)を含む防衛力強化は待ったなしとなった。課題となるのが、防衛費の国内総生産(GDP)比1%の壁。政府は新型迎撃ミサイルの導入も検討しているほか、トランプ米政権が同盟国の役割拡大を求めていることもあり、防衛予算の増大圧力は強まるばかりだ。今夏の平成30年度予算概算要求もにらみ、安倍晋三首相は1%枠突破も辞さない構えだ。(小野晋史)

 
防衛省内で、安倍首相のある言葉が注目を集めている。首相は2日の参院予算委員会で「GDP1%以内に防衛費を抑える考え方はない」と述べ、30年度予算の編成で、防衛費に関してはGDP1%にこだわらない考えを示した。

 
「1%枠」をめぐっては昭和51年、三木武夫首相(当時)が防衛費を国民総生産(GNP)比1%以内に抑える方針を閣議決定。62年度からの3年間は中曽根康弘内閣などで1%枠を突破したが、それ以降は平成22年度に米軍再編経費を含めGDP1%を超えたことが1度あるだけだ。

 
政府・自民党は現在、31年度からの中期防衛力整備計画の改定に向けた作業に着手。MD強化では、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の導入が議論されている。護衛艦や哨戒機など中国の海洋進出に対応するための装備も不可欠だ。

 
だが、新たな装備を導入する予算は限られている。29年度予算案で示された防衛予算は約5兆1200億円。このうち人件費が約2兆1600億円、装備品の維持・補修費が約1兆800億円あり、今後調達する装備品の経費として計上されたのは約8400億円にすぎない。海上自衛隊幹部は「現在の予算額のままでMDの新装備を調達する場合、何かを削らないといけない」と話す。現状では1基当たり1千億円以上はかかるとされるTHAAD導入は机上の空論といえる。

 
中曽根氏が会長を務めるシンクタンク「世界平和研究所」は1月、「より自立的な防衛力の整備は不可欠」と指摘して当面はGDP比1・2%を目標水準とするように提言した。防衛省関係者は「北朝鮮の弾道ミサイルや、中国の海洋進出などに対応していくには、現在の予算でははっきり言ってつらい」と打ち明ける。


防衛費などは国家財政や基本的防衛政策、周辺の脅威度などによって決めるもので始めから枠をはめると言うのは神学的防衛論争時代の負の遺産でしかない。日本の財政事情でそうそう防衛費ばかりを突出させるわけにもいかないだろうが、社会保障費36兆円からすれば微々たるものではある。今後、GDP比1.5%くらいまでは増加させてもいいのではないか。またその必要もあるのではないか。


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