中国の王毅・外相は8日「韓国はTHAAD(米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル」)配備を直ちに中断し、間違った道をさらに進んではならない」「THAADの観測範囲は韓半島(朝鮮半島)をはるかに超えており、中国の戦略的かつ安全保障上の利益を侵害している」「THAADは明らかに間違った選択であり、これは隣国としての道理に反し韓国の安全保障をさらに危険にさらしてしまう」などと発言した。今月6日にTHAADの一部が韓国に到着すると、中国ではこのような厳しい反応が相次いでいる。もちろん中国が何を言おうと、北朝鮮の核とミサイルの脅威に対抗するための軍事的備えを怠るわけにはいかない。

 
このように中国が神経質な反応を示す理由は、THAADには高性能Xバンドレーダーがあるためだ。しかしこれと同じ種類のレーダーはすでに日本で2カ所に配備されている。日本に配備されているXバンドレーダーはフォワード・ベースト・モードと呼ばれ、最大探知距離は2000キロに達するが、韓国でTHAADと共に設置されるレーダーはミサイル迎撃に特化するターミナル・ベースト・モードで、探知距離は1000キロを下回る。ところが探知距離が長い日本のレーダーを中国が問題視したとは聞いたことがない。韓国のレーダーは設置後に探知距離が伸ばされるという指摘もあるようだが、実際は北朝鮮のミサイルを迎撃するだけでも精いっぱいなため、中国を監視するモードに切り替えるべき理由などない。しかも米国は韓国のTHAAD以上に優れた中国監視用のレーダーをすでに十分確保している。
 

またロシアのメディアによると、ロシアが最近中国全土を監視するため設置したレーダーの場合、中国で1匹のハエが飛んでもそれを追跡できるほどの高性能だという。これについても中国政府は表向きには何の反応も示していないし、また中国も韓半島を監視するレーダーを稼働している。ところが中国は韓国のTHAADについてだけは、韓国政府がいくら説明しようとしてもそれを聞こうともしない。これでは韓国政府としても対応のしようがない。
 

一時は韓国、米国、日本の三角同盟から韓国を引き離す意図が中国にあるとの見方もあった。しかし最近は「習近平・国家主席が公の席で反対を表明したにもかかわらず、韓国がこれを聞き入れなかったことへの怒り」という見方の方がより説得力があるようだ。このように韓国を単にくみしやすい相手と考え、自分たちに従わせようとする中国の時代錯誤的な考え方は大きな問題だ。

 
在韓米軍が何らかの兵器を配備する際、国会の批准が必要となったことはこれまで1回もなかった。ところが韓国の最大野党「共に民主党」は昨日、THAAD配備に対する国会の批准を党として主張し始めた。またTHAAD配備予定地の慶尚北道星州郡では配備を妨害しようとする動きも出ている。このように中国の意向に忠実な代弁者たちは今後も国内でいくらでも出てくるだろう。国を守ることを「人ごと」と考える国は、それが「自分のこと」となった場合は国を守ることなどできない。


中国にとって朝鮮半島は米国にとってのキューバのようなものかもしれない。今時、宇宙からいくらでも地球上のどこでも見られる時代にミサイルシステムのレーダーがどうのこうのと言ってもあまり意味がないだろう。朝鮮半島に自分の方に向けて高性能兵器を配備されることが、心理的に中国にとってはわき腹に刃物を突き付けられたも同然なのだろう。何しろ長期にわたって属国だった朝鮮だから、その怒りはなおさらなのかも知れない。日本に「心の病を治せ」と言うのは「お前の国もかつては朝貢国だっただろう。それを思い出せ」と言っているのだろうか。


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