中国の習近平国家主席とフィリピンのドゥテルテ大統領による初の首脳会談で、習氏は巨額なインフラ投資を約束した上に、欧米が人権上の懸念を示しているドゥテルテ氏の麻薬撲滅運動への支持を表明するなど大盤振る舞いともいえる姿勢を示した。“雪解け”の演出に成功した中国はメンツを保ったものの、南シナ海問題をめぐる実質的な進展はなかったとみられる。

 
中国外務省の発表によると、ドゥテルテ氏は会談で「今日の会談は歴史的だ」などと両国関係の改善を強調する一方で、南シナ海問題についてはほとんど触れていない。

 
会談前に仲裁裁判所の裁定を自分からは持ち出さない意向を示していたが、裁定の棚上げや2国間協議に向けて明確な合意に至ったわけでもない。

 
劉振民外務次官は「南シナ海問題の適切な処理の新たな一ページを意味する」と“外交成果”を強調したが、言葉遊びの感もある。

 
欧米から人権問題で批判を受けていた中国がドゥテルテ氏の強硬な麻薬撲滅運動への支持を明らかにしたことで、さらに国際的イメージの低下を招く可能性も否定できない。

 
ただ今後、フィリピンが中国への経済依存を本格化させ、対中傾斜が後戻りできない段階に至れば、実際に2国間協議への回帰と裁定の棚上げが現実化する可能性もある。航行の自由などを求めフィリピンを支援してきた日米は厳しい立場に追い込まれる。

 
2013年にフィリピンがハーグの仲裁裁に提訴したのは、中国の海洋進出に危機感を抱いたアキノ前政権が国際圧力の強化を期待してのことだ。

 
同盟国の米国と近隣の大国である中国とのはざまで「いいとこ取り」を狙うドゥテルテ氏の外交は、アジアの安全保障に混乱をもたらす危うさをはらんでいる。


新興国にとって国家のメンツ以外に何も役にも立たない環礁を巡って争うよりもそれを道具に金をとった方が良いと言うのは現実的な方策ではある。だから一生懸命巡視船をやるだの、監視用の航空機をやるだのと言ってもそれがどこを向くか分かったものではない。日本もその辺はよく考えるべきだろう。


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