海上自衛隊の練習潜水艦「おやしお」が4月3日、南シナ海に面するフィリピン・ルソン島のスービック湾に入港した。海自の潜水艦がフィリピンを訪問するのは15年ぶり。海自の護衛艦「ありあけ」と「せとぎり」も同行した。
 
今回の派遣は初級幹部自衛官の練習航海の一環だが、南シナ海の軍事拠点化を進める中国を牽制する意図があることは明白だ。海自はこれまで護衛艦を南シナ海に派遣することはあったが、潜水艦については控えてきた。潜水艦の派遣は、護衛艦の派遣より「中国にとって痛烈なメッセージ」(海自OB)を伴うことになるからだ。
 
潜水艦は海中深くで隠密行動をとり、敵艦船の撃沈や偵察を任務とする。世界中の各国海軍と比べても屈指の性能と運用能力を誇る海自の潜水艦派遣は、練習艦といえども中国には脅威に映るはずだ。海自は今回、そこにあえて踏み込んだ形だ。
 
米海軍は、南シナ海で中国が「領海」と主張する人工島の周辺12カイリ内に艦船を派遣する「航行の自由」作戦を展開しているが、日本は当面、この作戦には参加しない方針だ。ただ、国際社会の一員であり、南シナ海のシーレーン(向上交通路)から恩恵を受ける海洋国家として「日本なりの存在感」(海自幹部)は示す必要がある。潜水艦の派遣は、その一環といえそうだ。
 
大役を任されたおやしおは、これまで11隻が建造されている「おやしお」型潜水艦の1番艦だ。平成10年に就役。艦名は海流「親潮」に由来する。同じ艦名を持つ艦艇としては、旧海軍の陽炎(かげろう)型駆逐艦「親潮」などがある。
 
昨年3月に通常の潜水艦から練習潜水艦に種別変更され、第1練習潜水隊の所属となった。現在の練習潜水艦は、おやしおと「はるしお」型潜水艦の7番艦「あさしお」の2隻だ。

おやしお型の特徴は、艦体が従来の「涙滴型」から「葉巻型」に一新されたことだ。涙滴型の船体中央部を延伸することで、船体容積の増加を実現した。基準排水量2750トン、全長82メートル、幅8・9メートル、高さ10・3メートル、乗員70人。
 
日本の潜水艦としては初めて艦体すべてをセンサーとするソーナーを装備し、索敵能力が飛躍的に向上した。敵のソーナー音を吸い取って無反射状態にする音波吸収材(無反響タイル)を艦体に採用し、高いステルス性も確保している。新型魚雷や機雷の自動発射装置も搭載する。
 
現在は最新鋭の「そうりゅう」型潜水艦の建造、就役が進んでいるが、「おやしお」型は依然として海自潜水艦部隊の主力を担っている。
 
海自はそうりゅう型が1隻就役するごとに、老朽化が進んだ通常潜水艦を練習潜水艦に変更し、最も古い練習潜水艦を退役させてきた。一方、防衛省はこれまで続いてきた潜水艦16隻態勢を、33年度末までに22隻態勢に増強する計画を今年から実行に移している。これに伴い、練習潜水艦のおやしおには延命措置がほどこされ、退役が延期される方向だ。日本の海を守るため、おやしおにはもうしばらく活躍してもらうことになりそうだ。


海自もかなり積極的にやるなあ。せいぜいソマリア派遣の艦艇を航行させる程度かと思ったが、訓練派遣とは言え、空母型護衛艦を派遣したり、潜水艦を派遣したり、かなり積極的に南シナ海でのプレゼンスを示そうとしている。もっとも海自が独自でやるわけではないから現政権の方針なんだろうけど昔の事なかれ主義とはずいぶんと変わったものだ。中国も南シナ海問題ではかなり劣勢を強いられているし、台湾は政権交代で一つの中国から脱却して西側との協調路線を取ろうとしているし、どこかで逆上してことを起こさないといいのだが、・・。


日本ブログ村へ(↓)