不動産王のドナルド・トランプ氏は、序盤戦最大のヤマ場「スーパーチューズデー」で、ジョージア州やマサチューセッツ州などを次々と制し、圧勝を収めつつある。もし、彼が米大統領になったら、日本にどのような影響があるのか。政治家経験がなく、過激な発言が多々みられるため、永田町や霞が関も戦々恐々としているという。
まず、経済は打撃が大きそうだ。トランプ氏は2月に入り、演説やイベントで「米国は、日本との間でゾッとするような合意をした」「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は最悪だ」「米国を打ちのめす第一の方法は(貿易相手国の)通貨安だ」といい、「(TPPを)ゴミ箱に捨てる!」と主張している。
もともと、米大統領選の候補指名争いでは、各種業界の支持を得るため、候補者たちは「国内産業の保護」を打ち出す傾向があるが、トランプ氏の「反TPP」は筋金入りといえる。
これは、TPPを「成長戦略」の切り札に位置づけている安倍晋三政権には、実に不都合だ。
東洋経済新報社で金融証券部長などを歴任した、経済ジャーナリストの小倉正男氏は「(トランプ大統領となれば)日本経済は大きなダメージを受ける。TPPをテコに規制緩和を進め、経済成長を目指してきた安倍政権は苦しくなる。トランプ氏の政策は非常に内向きで、セコイ。要は、米国のことしか考えていない。日本だけでなく、世界経済全体が『スランプ』に陥り、恐慌につながる可能性も否定できない」と警告した。
安全保障でも衝撃だ。トランプ氏は2月25日に行われたテレビ討論会で「日本、韓国などを守ることなどできない」といい、米軍駐留経費の負担増をブチ上げた。日米同盟の「片務性」も批判しており、日米安保体制の根幹が揺らぐことも想定される。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「トランプ氏は『日本を守ってやっている』という意識が強い。日米同盟は表向きは対等だが、実態は異なる。日本は甘えていて、沖縄県・尖閣諸島で不測の事態が起きても『米国が助けてくれるはず』と思っている。だが、トランプ大統領なら『(守ってほしいなら)カネを払え。それが無理なら人を出せ、汗をかけ』と言ってくるはずだ。真の意味で、日米同盟のあり方を突きつけてくるのではないか」と分析した。
中国や北朝鮮の脅威が高まるなか、日本の安保政策を抜本的に見直すことになりかねない。憲法改正を要求してくる可能性すらある。トランプ氏の大統領就任は劇薬となりそうだ。
経営者と言うのは、何よりもまず自分の企業と言う考え方が強いので大統領になれば、まず国内産業優先を打ち出してくるだろう。そういう意味では内向きの政策を採る可能性は高い。でも、TPPに先に参加して日本に参加を呼びかけたのも米国だし、この時代、保護貿易もないだろうから、「ゴミ箱に捨てる」と言ってもなかなか難しいものがあるだろう。防衛については、「自分の国はまず自分で守る」が大原則で、世界第3位の経済大国で高度な技術を持っている日本が何時までも米国依存でもないだろう。同盟関係は同盟関係、しかし、「自分の国は自分で守る。その代わり余計な口出しはするな」と言う主権国家としての矜持が必要だろう。永田町も霞ヶ関も戦々恐々と言うが、一番戦々恐々なのは候補者として選出した当の共和党ではないか。さて、どうなることか。
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