本土との「構造的差別」と主張
沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が就任から10日で1年を迎えた。 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設反対を訴え、国との対決姿勢を貫くが、安倍政権は移設方針を崩さず、対立はかつてないほど先鋭化している。就任後の翁長氏の主張を読み解くと、 普天間問題 の背景には、「自己決定権」を失い国からの基地押しつけが続く現実、今も改まらない国と地方の「主従関係」による抑圧の構図が浮かび上がる。
「戦後70年になるが、国土面積の0・6%しかない沖縄県に74%の米軍専用施設があるのは、いくらなんでも理不尽ではないか。沖縄県の過重な基地負担は、日本国民全体で考えてほしい」(2014年12月10日、知事就任会見)
翁長氏は就任後、一貫して国内の基地負担が沖縄に集中している現状を訴えてきた。沖縄は戦後、米軍の施政下で「銃剣とブルドーザー」(翁長氏)によって土地を強制接収され、基地が造られた。1972年の本土復帰後は本土から米軍が移転してくる半面、他の都道府県への米軍施設や訓練移転はわずか。翁長氏が沖縄と本土の「構造的差別」と主張するゆえんだ。
琉球王国にさかのぼる主張も台頭
「代替案を持っているのか、日本の安全保障をどう考えているのか、という話をすること自体が日本の国の政治の堕落だ」(15年4月5日、菅義偉官房長官との初会談で)
辺野古移設反対という県民の民意を背に計画の再考を求める翁長氏に対し、安倍政権は冷淡だった。安倍晋三首相、菅氏は翁長氏が就任後の1月に官邸を訪れた際に会談せず、15年度当初の沖縄振興予算も5年ぶりに減額した。政府側は当初「辺野古が唯一の選択肢」と繰り返せば、翁長氏はいずれ方針転換せざるを得なくなると読んでいた。
菅氏は8、9月に計5回、県との集中協議を行った。この場で翁長氏は、そもそも基地は沖縄が望んだものではなく、強制的に造られた事実を突き付け、代替案を求める政府の姿勢を批判した。だが、菅氏は県内移設を前提とした96年の日米合意が出発点との認識を崩さず協議は決裂。翁長氏は辺野古移設に必要な前知事の埋め立て承認取り消しに踏み切った。
「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている辺野古の状況を、世界中から関心を持って見てください」(9月21日、スイス・ジュネーブでの 国連人権理事会 での演説)
翁長氏は今、国内外への訴えかけを強めている。国連人権理事会での演説を支援した非政府組織(NGO)「市民外交センター」の上村英明代表(恵泉女学園大教授)は「自己決定権の議論は歴史をさかのぼって、その地域がどれだけ正当な権利を持っているかという検証作業」と話す。
沖縄は1879年の「琉球王国の日本併合」で自己決定権を失った。その後、太平洋戦争で多くの県民の命が奪われ、米軍が基地を造り、今も負担はなくならず、地域の意思は顧みられない。この状況を打開するため、沖縄が本来持っていた自己決定権を主張すべきだ―との考え方が台頭している。
自己決定権をめぐっては、県内でも独立論が上がる一方、知事らは「地域のことを地域が決める権利」と主張しており、考え方はさまざまだ。ただ「国からの押しつけ」に対する反発が、琉球時代の自己決定権を主張するほど切迫していることは間違いない。
「地方は黙っていろ」に反論
「日本には地方自治や民主主義は存在するのでしょうか。沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安保体制は正常といえるのでしょうか」(12月2日、代執行訴訟口頭弁論)
翁長氏は地方自治の観点からも政府を批判する。2000年に地方分権一括法が施行され、国と地方は対等の関係になった。地方自治法 は、地方への国の関与は「必要最小限度にするとともに、地方の自主性や自立性に配慮しなければならない」と定めている。
政府は安全保障や基地問題は国の専権事項であり、辺野古移設の阻止を目的とした翁長氏の埋め立て承認の取り消し処分は違法だと主張。「辺野古移設は自治権を侵害しており、憲法違反」と訴える県側と真っ向から対立している。
「安全保障の問題だから地方は黙っていろと言うなら、国民の人権を無視する形になる」(11月11日、記者会見)
地方の意思は国の政策にどこまで反映できるのか。翁長氏の問いかけは、すべての自治体への問題提起でもある。
国家があってそのくくりの中に地方がある。地方の自治権は尊重されるべきであるが、それは国家と言うくくりの中での話で国家の方針に地方がそれぞれ意見を言い始めたら国は崩壊する。今回の裁判で沖縄の主張が認められたら日本国は空中分解するだろう。何だかこの国は誰も彼も権利ばかりを主張し、マスコミもそれを無条件で後押しするが、権利には必ず義務も伴う。普天間を辺野古に移設してその跡地にディズニーリゾートが出来れば、少なくとも状況は現状よりは改善されると思うが、・・。すべてにおいて自主決定権を認めろと言うのであれば独立するしかないだろうが、それは地方自治の逸脱だろう。
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