米海軍が、イージス駆逐艦「ラッセン」を南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で中国が造成している人工島の12カイリ(約22キロ)内に派遣した。米国は今後も3カ月に2回以上のペースで南シナ海での「航行の自由作戦(フリーダム・オブ・ナビゲーション)」を継続する方針だ。米中の緊張はどこまで高まるのか。自衛隊は南シナ海問題にどう関与するのか。
「あらゆる事態に備えることは重要だが、過度に警戒する必要はない。南シナ海で米中の紛争が起きる可能性は低い」
防衛省幹部はこう分析する。その根拠は、米国の危機管理能力にあるという。米国は冷戦時代、ソ連との間で核戦争の勃発をかけた神経戦をくぐり抜けた経験がある。事態のエスカレーションをコントロールする力は世界のどの国よりもたけている。今回の南シナ海での示威行動も、緻密な計算の下に行われているという。
中国も米国と事を構える気はなさそうだ。別の防衛省幹部は「米艦が南シナ海に派遣された後の中国外交部の声明は極めて抑制的な内容だった。今後、高官同士の会談などで多少は威勢の良い発言があるかもしれないが、国内向けに過ぎない」と指摘する。
それでも、不測の事態は生じ得る。日本政府には「中国共産党の中央軍事委員会が軍の末端までしっかり統制できているのか。それが懸念材料だ」(官邸筋)と不安視する向きもある。党中央の意思は米国との衝突回避で固まっていても、最前線の一部の中国海軍が暴発すれば南シナ海の緊迫は一気に高まるからだ。
日本政府は今のところ南シナ海問題に関しては静観する構えだ。菅義偉官房長官は米国の南シナ海へのイージス艦派遣について「わが国として支持する」と明言した一方で、自衛隊の関与については「具体的な計画は有していない」と強調している。
政府関係者は「菅氏の念頭には来年夏に控える参院選がある」と指摘する。自衛隊の役割を拡大する安全保障関連法が今年9月に成立したとはいえ、国民的な理解を十分に得ているとはいえない。そうした中で自衛隊が米軍の作戦に加われば、世論の反発を招く公算が大きく、参院選にもマイナスの影響が生じかねないという判断がある。
ただ、米国側には自衛隊の関与に期待する声が強い。米軍からの強い要請があれば、「航行の自由作戦」に直接参加する形ではなくても、自衛隊が南シナ海で平時の共同警戒監視活動(パトロール)や共同演習を行い、中国を牽制する動きに協力することは想定される。
万が一、そこで米中の偶発的な衝突が生じれば、自衛隊はどう対応するのか。防衛省幹部は「あえてシミュレーションすれば、安保法で可能になる『平時の米艦防護』を適用する可能性がある。日本が集団的自衛権を行使したり、重要影響事態を認定するシナリオに比べれば、よほどリアルだ」と語る。
これまで自衛隊は、武力攻撃に至らない段階の侵害に対しては自己防護しかできなかった。新たな安保法制では、一緒にいる米艦を守るための武器使用を認めている。互いに守り合うことことで、抑止力と対処力の強化を図っている。
自衛隊が「平時の米艦防護」に基づき中国に反撃すれば、そこから事態が激化し、泥沼化するとの批判もある。ただ、自衛隊が活動できる場所は「現に戦闘が行われている現場」以外とされ、相手に危害を加える射撃は正当防衛や緊急避難に限定するなど歯止めがかかっている。
それでも中国が日本を武力攻撃すれば、今度は米国が集団的自衛権を行使し、中国との武力紛争に突入する可能性が高い。防衛省幹部は「中国がそこまで覚悟する場面は想定できない」と語っている。
基本的には南シナ海を通過する際に米艦と共同訓練を実施したり、ベトナムへ寄港したりと言った内容になるのだろう。米国にとってもっとも頼りになる相棒は日本だろう。しかし、南シナ海を巡って日本が米国とともに中国と事を構えると言う事態は想定し辛い。それは中国の方が望まないことだろう。偶発的な武力衝突があるかもしれないが、米韓に対して中国が仕掛けると言うのはちょっと考え難い。その分、海自の方へ来る可能性はあるが、日本が中国の主張する領海内に進入することはあり得ないので事が起こっても理由は立つだろう。しかし、中国と言うのは厄介な国ではある。
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