米オバマ政権が27日、南シナ海の南沙諸島で中国が岩礁を埋め立てて作った人工島の周辺で中国が領海と主張する海域に、米軍艦船を派遣した。国際法で領海と定められている12カイリ(22キロメートル)内に進み、中国の領海とは認めない姿勢を明確にしたことになる。南シナ海問題をきっかけに、米中緊張が高まるのは確実だ。
  
 
9月下旬の米国での米中首脳会談で、オバマ大統領は、南沙諸島での中国の人工島建設の動きに強い懸念を示した。だが、中国の習近平国家主席は「南シナ海の島は、昔から中国の領土だ」と述べて埋め立てを正当化し、両国の立場は平行線だった。後に振り返れば、この会談が米中「冷戦」の始点となるかもしれない。それぐらい、米中間の対立は深くなっている。オバマ政権が環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意に突き進んだのも、経済面でも中国包囲網を一段と強めたいとの思惑があったからだ。

 
南シナ海の領有権問題に関していえば、習主席は米中首脳会談で「軍事拠点にはしない」「国際法に基づく各国の権利を尊重する」と発言しており、一定の譲歩の姿勢もみせた。専門家の多くは、この発言を「南シナ海の公海上の米軍の航行は妨げない」という意味だと解釈している。

 
首脳レベルでは、米軍の行動を黙認する暗黙の合意ができているとも解釈できる。だが、中国解放軍は今年に入ってからも、中国軍機が米軍の哨戒機に異常接近するなど「現場の暴走」ともとれる行動を繰り返している。南シナ海での米軍行動が、思わぬ「衝突」「接触」に発展しかねず、両国間の緊張が一段と高まることも予想される。「ミニ・キューバ危機」を予測する向きもある。

 
中国の南シナ海での人工島建設をおさらいしてみよう。この問題について、今年に入ってから繰り返し警鐘を鳴らしてきたのは米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)だ。同所は、9月15日に新しいレポートを公開し、中国が南沙諸島のミスチーフ礁に3本目の滑走路を建設している可能性があることを示した。

 
中国は、昨年から同国の海南島から1000キロメートルにある南沙諸島のファイアークロス礁に、3000メートル級の滑走路の建設を始め、今年6月には、同礁の埋め立てが完成したと報じられていた。滑走路の建設作業は、塗装段階まで進み、駐機場、ヘリポート、管制塔まで建設されているという。

 
9月8日に撮影されたとされる衛星写真によると、同諸島の他の岩礁である、スービ礁やミスチーフ礁でも整地作業や、滑走路建設の作業が進んでいる。米国の繰り返しの警告や周辺国の非難をものともせず、同地域の「実効支配」を強めようとする中国の姿勢に、米国の「忍耐」も限界を越えたようだ。

 
南沙諸島に関する記述は、中国漢時代の文献にも記述がある。近代では、1887年同諸島を発見した英国によって領有権が主張され始めた。その後20世紀に入り、ベトナムの宗主国であったフランス、日本、台湾などが次々と領有権を主張。第二次世界大戦後の1945年に、空白となった南沙諸島にフランスが再び参入するが、ベトナム戦争の煽りで撤退し、中華民国政府が4隻の軍艦で1946年までに諸島の占領を完了した。

 
その当時に作成された「南海諸島位置図」が中国の今日の主張の根拠になっている。中国は、この地図を元に、南シナ海の大半の領域を「牛舌線(9段線)」と呼ばれる線で取り囲み、独自の管轄権を示している。
 
 
今月に入って、中国が遼寧と上海の造船所で、国産の空母を生産していることが分かっている。国際軍事情報企業HISジェーンズが、5月1日、6月3日、9月22日に撮影した衛星写真では、空母の建設作業がだんだんと進んでいる様子が見られる。空母は、南シナ海での運用も視野に入れていると見られる。今回の米軍行動には間に合わないが、将来、この地域に配備されるようなら、中国と米国、周辺国との緊張を高める材料になるのは確実で、在日米軍のありようや、自衛隊の南シナ海への派遣問題も浮上しかねない。

 
現在、南シナ海の周辺国では、中国だけでなく、ベトナム、台湾、フィリピン、マレーシア、ブルネイの6つの国と地域が領有権を主張している。今年6月に来日したフィリピンのアキノ大統領は、都内の講演会で「中国が不法に領有権を主張している」と厳しく批判したうえで、日本の自衛隊のフィリピンの基地使用を容認する姿勢を示した。


米国は中国人工島の12海里以内にイージス駆逐艦を派遣したようだ。現時点では中国との間に何らかの摩擦が発生したという報道はないが、一触即発の事態は継続しているのだろう。南シナ海が中国に押さえられると日本も中東からの原油などはボルネオ島の東のマカッサル海峡を通り、セレベス海を抜けてフィリピンの東側を通って日本に運ぶことになるのだろうか。いずれにしても日本も対岸の火事と座して眺めているわけには行かなくなるだろう。中国経済が崩壊してくれれば良いが、現在程度の成長が続くと2025年には中国のGDPは米国と肩を並べると言う。米国にしても今のうちに何とかしておかないと手も足も出なくなる。今後中国がどう出るか、それが最大の注目だろう。


日本ブログ村へ(↓)