陸上自衛隊が2004~06年にイラク南部サマワで実施した人道復興支援活動で、「戦死」を想定して準備していた対応の詳細がわかった。死者が出た場合には3時間以内に家族に連絡する体制を整備。死に直面した隊員のため、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の対策チームを日本から急派する体制もとった。安全保障関連法案の国会審議では自衛隊員のリスクをめぐる議論が深まらないままだが、派遣される側の自衛隊は10年前から死に備えていた。
08年5月に自衛隊がまとめた内部報告書の「イラク復興支援活動行動史」によると、死者が出る状況を「不測事態」と表現。家族への通知の責任者を部隊長に指定し、留守宅の連絡先を事前に2カ所把握した。連絡時間を3時間以内としたのは、報道機関から初報が伝わることを防ぐためで、部隊と陸上幕僚監部、防衛庁(当時)本庁も参加して訓練も実施した。
「死あるいは惨事と接する活動」「多数の死体、変死体と接する活動」で隊員が受けるストレスを「惨事ストレス」と規定。発生時には自衛隊中央病院(東京)から、精神科医の医官1人、心理幹部(カウンセラー)1人の「メンタルヘルス支援チーム」を派遣するとしていた。行動史は、イラク派遣を知らされた両親がうろたえた例などを挙げ、「軍事組織においては隊員は身の危険を顧みず任務を達成することが求められ、家族にもその覚悟が求められるが、現実にはそうではない面があった」と指摘。「自衛隊がやや曖昧にしてきた『家族の意識改革』醸成措置を行うべきである」と記述し、家族にも覚悟が求められるとしている。
そのうえで、遺族に支払う弔慰金(賞じゅつ金)の増額や、瀕死(ひんし)の重傷を負った場合の叙勲規定の新設などを求めた。
また重傷者を現場から運び出す手段がないため、ヘリを自前で確保するよう求めた。「戦闘発生現場での患者救出輸送が可能な防護性のある救急車(装甲救急車)」の整備も提言している。
あらゆる事態に迅速的確に対応できるよう検討を尽くしておくことは当然のこと。やらないほうがおかしい。安保法制成立後の対応を法律成立前に検討したと共産党議員が非難して国会が紛糾したが、これも法律が成立した場合の対応を部内で検討するのは当然だろう。何かをやったと言うなら問題だが、・・。最悪を想定して対応するのが危機管理、中途半端は何もしないのと同じことだ。
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