翁長雄志知事は集中協議にあたり、主張する論点として(1)戦後の沖縄の歴史(2)普天間飛行場が建設された経緯(3)米軍の抑止力-を掲げた。断片的に触れてきたテーマだが、改めて整理して提示したのは県の有識者委員会の報告書という“虎の巻”があるからだ。
有識者委は仲井真弘多前知事による辺野古の埋め立て承認の経緯を検証し、7月16日に承認手続きの瑕疵(かし)(欠陥)を指摘する報告書を翁長氏に提出した。報告書は沖縄に米軍基地が集中した経緯や普天間飛行場の現状を詳述。海兵隊の抑止力についても、沖縄駐留の地理的優位性や海兵隊各部隊の一体的運用論に異を唱え、辺野古移設の必要性を否定している。
翁長氏はこの報告書を片手に辺野古移設断念と県外移設を政府に迫る算段を描く。そうした主張は辺野古の埋め立て承認を取り消すことへの布石にもなる。
しかし、政府側が翁長氏の主張を受け入れるはずはなく、1カ月間の集中協議では双方の「見解の相違」が浮かび上がってくる。見解の相違を根拠に埋め立て承認を取り消すことは客観性に欠けるだけに、「取り消しが無理筋であるという県側に不利な証明をしてしまう」(県幹部)との見方がある。
承認取り消しは翁長氏が最も重視するカードだが、切ってしまえば政府に行政不服審査で取り消しの効力を停止される見通し。埋め立て工事の差し止めを求める仮処分を地裁に申請しても見解の相違が壁となる。
協議期間はカードを温存できるため、翁長氏にとって渡りに船だったが、政府との密室協議は「世論戦」に有効とはいえず、移設反対の支持勢力が不信感を募らせかねない。協議後に埋め立て工事が始まれば、支持勢力にきしみが生じることも避けられない。
この1ヶ月でまとまるような問題でもないだろう。沖縄県知事側には選挙で推してもらった左翼系団体36万票の重みがある。政府側は米国との国際公約があり、絶対に引けない。落しどころのないせめぎ合いが続くだろう。しかし、米軍基地負担と言っても共同使用の米軍基地を含めれば沖縄の負担は20%強、それでも軽い負担とは言えないが、米軍専用基地だけで比較するのは何かしら意図があってのことだろう。
米軍基地の面積で言えば北海道が第一位、基地の数でも第二位になる。専用基地だけしかカウントしないと三沢、横須賀、厚木、キャンプ座間、横田、岩国、佐世保などの巨大基地はすべて米軍基地ではなくなってしまう。そういうところは正確に報道すべきだろう。基地があるから危険だというのならそれは米軍基地だけでなく自衛隊の基地も民間の飛行場も同じことだろう。ハイテクを誇る航空機も絶対に安全と言うことはない。
政府はUSJの誘致や振興対策費で話をつけたいようだが、金をやると言っても、沖縄側も「じゃあ、それでいいよ」とは言えない事情もあるだろう。一番疑問なことは沖縄がどうして地域振興を図ろうと言うのかそのビジョンが何も見えないことだ。そうした具体的なビジョンがあればそれに沿う形で政府が支援すると言う姿も見えてくる。
米軍基地を巡る隠れた利権も様々なものが存在するというが、利権にしても主義主張にしても沖縄で生活する人たちから遊離したところでぶつかり合っているような気がしないでもない。大体どうして東京在住の公務員退職者が沖縄で基地反対と叫んで座り込みをしているのか。今の日米関係が続く限り沖縄から米軍基地がなくなることはないだろう。
沖縄は西太平洋と東シナ海、南シナ海、インド洋を押さえるにはあの場所は絶対に必要でまさに要と言う位置にある。主義主張や原則論ではなく現実レベルでの話し合いが進めばいいと思うが、・・・。今回の辺野古工事停止期間の集中討議では表向きだけはやや和らいだ印象があるので冷静に具体論で話を進めるべきだろう。
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