陸上自衛隊の次期多用途ヘリコプター「UH-X」の機種選定が7月、紆余(うよ)曲折を経て決着した。UH-Xはいったん純国産の新型機に決定したが、平成24年に官製談合が発覚、選定は白紙に戻されていた。新たにUH-Xに選ばれたのは海外企業との共同開発機で、純国産機の道は事実上閉ざされた格好だ。今回のUH-Xの選定は、技術保持の問題や国益と捜査の関係性という課題を浮き彫りにした。
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UH-Xに決まったのは、富士重工と米ベル・ヘリコプター社が共同提案した既存機の改造案。消防や警察、海上保安庁で使われている「ベル412EP」がベース機になる。
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UH-Xに決まったのは、富士重工と米ベル・ヘリコプター社が共同提案した既存機の改造案。消防や警察、海上保安庁で使われている「ベル412EP」がベース機になる。
今回の選定の評価項目は実現可能性や納期、性能など7点。性能の項目では川崎重工と仏エアバス社が提案していた新規開発機「X9」に譲ったが、他の6項目で上回った。防衛省は量産によるコスト削減を見込み、UH-Xの民間転用や国際輸出市場への展開も視野に入れている。
多用途ヘリは物資・人員の輸送や人命救助などの任務に当たる。尖閣諸島(沖縄県石垣市)など離島での有事の際にも活用される予定だ。現行の多用途ヘリは、安価で機体数は多いが航続距離が短く離島防衛には不向きな「UH-1J」と、航続距離は長いが高価で機体数が少ない「UH-60JA」の2機種がある。
また、UH-1Jは退役が進んでおり、UH-Xは「両機体の良いとこ取り」(防衛省幹部)になると期待されている。
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UH-X事業は24年3月、川重の提案した同社の国産観測(偵察)ヘリ「OH-1」をベースにした改造機案が、富士重提案のUH-1J改造機案を抑えて選ばれた。しかし、選定をめぐり不正があった疑いが浮上。東京地検特捜部が同年9月、防衛省を官製談合防止法違反容疑で家宅捜索する事態に発展した。
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UH-X事業は24年3月、川重の提案した同社の国産観測(偵察)ヘリ「OH-1」をベースにした改造機案が、富士重提案のUH-1J改造機案を抑えて選ばれた。しかし、選定をめぐり不正があった疑いが浮上。東京地検特捜部が同年9月、防衛省を官製談合防止法違反容疑で家宅捜索する事態に発展した。
捜査の結果、防衛省の課長級職員2人が、入札前に川重側に富士重の内部資料を渡すなどの便宜を図っていた事実が判明。ただし、不正の動機は、米ベル社のヘリがベースであるUH-1J改造機案ではなく、技術保持の観点から国産機案が選ばれるようにするというものだった。さらに2人は川重から接待などは受けておらず悪質性は低いとして、東京地検は同年12月、同法違反罪での略式起訴にとどめた。
しかし事件の影響は大きく、UH-X選定事業は白紙に戻され、機体選定からやり直しとなっていた。
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UH-X選定をめぐるこうした一連の経緯は、2つの課題を浮き彫りにした。
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UH-X選定をめぐるこうした一連の経緯は、2つの課題を浮き彫りにした。
まずは技術保持の問題だ。防衛省には国産技術を重視する声が根強く、官製談合の動機もこうした意図の表れだったといえる。だが、純国産は全ての技術が自前となることからコスト高につながる。一方、海外企業との共同開発ではコストを抑制できるため、白紙化後の機体選定で富士重と川重はともに海外企業との共同開発を提案し、国産の多用途ヘリの道は途絶えたことになる。
次は国益と捜査の問題だ。検察幹部は「悪質性が低くても談合は談合。しかし捜査で国防計画に遅れが生じたのは確かだ」と話す。ただ、「検察官が国益を考え捜査するかどうか決めるのは越権だ。不正があれば立件せざるをえない」と複雑な胸中を明かした。
今回の選定について、軍事ジャーナリストの清谷信一氏は「ベル412のベース機であるUH-1は40年以上前に設計された機体で設計思想が古い。改造後も大きな発展は望めず、UH-Xが世界で売れるかは疑問だ。技術蓄積の面でも、民間・国際市場への展開の面でもX9の方が良かった。そもそも既存機の改造機と新規開発機とを同じ土俵上で選定したのがナンセンスだった」と手厳しい。「三菱重工も含め日本にヘリ会社は3社あるが、どこも防衛予算で食べている。UH-X選定は、防衛航空産業のあり方を考える契機にすべきだ」と指摘した。
一方、軍事専門誌の記者は「多用途ヘリと用途が重なるオスプレイの導入などで防衛予算が圧迫され、コスト面や納期の確実さで富士重案が高評価を得たのだろう」と推察。その上で「もはやヘリ自体に革新的な発展の余地は少なく、高いコストをかけて国産機を開発するメリットは小さい。今後は国産のヘリ技術のうち、どの技術が核心的で維持する必要があるかを選択、発展させる必要がある」と指摘した。
金も時間もないのか、もっとも安全で手堅い選択になったが、確かに412EPの原型UH1はベトナム戦争当時から飛んでいたヘリで古いと言えばもう骨董品のような機体だ。実際に機体を見てもリベットがごつごつ出っ張っていて、「これって空を飛ぶ機械なのか」と思わせる。もっとも速度が低いので抵抗は影響ないのだろう。もう完成され尽くされた機体なので自衛隊仕様に改造したとしても間違っても失敗はないだろうし、これまでもずっと同系列の機体を使用してきたので運用も手堅いだろう。長距離高速輸送はV22が担当するのでUH60は更新しない。戦闘の様相が正規軍同士の対象戦から非対象戦に変わってしまったので武装ヘリは更新しない。そんなところだろうか。でも武装ヘリは離島作戦などを考慮すると一定数装備しておきたいところだろう。UH-Xとは別に武装ヘリはOH-1を原型にして川崎にやらせるとか、・・・。あり得ない話ではないと思うが、予算がきついだろうなあ。
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