「中国海警の新型巡視船は強力である」という人民日報(英文ウェブ版7月29日 )の記事に、アメリカ海軍関係者たちの話題が集中している。


■ 人民日報が衝突戦法を誇示
人民日報が紹介したのは中国海警の新鋭1万2000トン級巡視船である。その巡視船自体の情報は以前から明らかになっていた。

 

これまで世界の沿岸警備隊が用いる巡視船(アメリカでは「カッター」と呼ばれる)のなかで最大の船体を誇っていたのは、日本の海上保安庁が運用している「しきしま型巡視船」(PLH-31しきしま、PLH-32あきつしま)であった。その満載排水量は9300トンであり、アメリカ沿岸警備隊が運用している巡視船のなかでも最大の「バーソロフ級カッター」の満載排水量が4500トンであるから、巡視船としては突出して巨大なものである。
 


その巨大な「しきしま型巡視船」よりさらに大型(中国当局が公表している1万2000トンという数字は総トン数であり、満載排水量はさらに大きい数字となる)の巡視船を中国が建造しているということで、海軍関係者などは気にしていたところであった。ちなみに、アメリカの沿岸警備隊が第2海軍的な役割を負っている以上に、中国海警は第2海軍としての地位を与えられているため、アメリカ海軍が中国海警の動向に関心をもつのは当然と言える。

 


このように超巨大な中国海警巡視船の記事が問題となっているのは、何もその船体の大きさのためではない。国営メディアである人民日報による新鋭巡視船の紹介内容が“国際的スタンダード”とは全く乖離した、以下のような“中国独特”な説明となっているからである。

 


「軍艦構造の船体である中国の新鋭1万2000トンクラス海警巡視船は、2万トンを超える船舶へ体当りするパワーを持っており、9000トン以下の船舶との衝突では自らはダメージを受けないようになっている。そして、5000トンクラスの船舶に衝突した場合は、相手を破壊して海底の藻屑としてしまうことができる」

 


中国以外の“普通の国”であるならば、巡視船や軍艦を紹介する場合には、船体の寸法やエンジン性能、それに搭載武器などを列挙することになる。にもかかわらず、中国当局は新鋭巡視船の性能を「どのくらいの船を体当りして沈められるか」によって誇示している。これには、さすがのアメリカ海軍関係者たちも度肝を抜かれてしまったのだ。



中国船はあちこちでむやみやたらと体当たりをしているようだが、でかい船を作って体当たりで相手を沈めようと言うのか。普通は大型巡視船を建造するのは長距離哨戒などのためだが、体当たりをして相手を沈めるために大型船を建造すると言う、こういう発想は中国でないとできないだろう。今の軍艦は装甲などはないのでぶつけられたらひとたまりもないかもしれない。武器を使わない対抗策は高速で回避することだけだろうが、要するに逃げると言うことだからそれが付け目なのだろう。野蛮と言えば極めて野蛮な戦法だが、国家としても敵は逃げたと喧伝できるし、海上警察としても武力による戦闘ではなく追い払えばいいのだから、目の付け所と言えば的を得ているかもしれない。でも米国がアイオワ型戦艦でも出してきたらどうするのだろう。


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