日本の空を護る航空自衛隊には、F-2、F-15「イーグル」、F-4EJ改「ファントムII」と呼ばれる3機種の主力戦闘機が配備されています。このうちF-15とF-4EJ改はアメリカのマクダネルダグラス社で開発された外国製ですが、最新鋭のF-2は三菱重工が主体となって開発した国産戦闘機です。
F-2はジェネラルダイナミクス社のF-16「ファイティングファルコン」を原型とし、日米共同によって独自の改修を加えるという形で開発がスタートしました。F-16が原型とはいってもその設計は殆どが見直されており、特に主翼は対艦ミサイルを4発携行するという目的を達成するために非常に大きくなっています。
一部メディアにおいて、アメリカの横やりによって純国産戦闘機の開発を潰されたという主張がありますが、この当時の日本には独自に戦闘機を開発する能力がありませんでした。もしアメリカの助力、特にエンジンの供与が無ければ、現在のF-2に匹敵する性能の戦闘機は開発できなかったに違いありません。
F-2は最新鋭とはいっても、2000(平成12)年の配備開始からすでに15年が経過しています。しかし、現代戦闘機にスピードや機動性は殆ど意味がありません。搭載電子機器やそれらを制御するソフトウェアが勝敗を決するため、F-2は継続したアップデートを行うことで、配備開始当時よりその戦闘能力は著しく向上しています。
かねてよりF-2は、「平成の零戦」というあだ名で呼ばれることがあります。実のところF-2はその配備当初、空戦能力は決して高いとはいえませんでした。むしろ対艦攻撃能力に重点を置いた「平成の一式陸攻」とも言える戦闘機でした。F-2はAESA式と呼ばれる新機軸のレーダーを搭載していましたが、初期には不具合も多発し空戦能力に欠陥ありと大々的に報道されたこともあります。
しかしそのAESAレーダーも現在では新しい「J/APG-2」へと切り替わっており、目視外視程空対空ミサイルも性能に劣るAIM-7F/M「スパロー」から、最新鋭の「99式空対空誘導弾」が装備できるようになり、極東においても有数の空戦能力を持つ戦闘機に生まれ変わっています。また近いうちに、すれ違いざまに射撃しても180度旋回して後方の戦闘機さえ撃墜可能な「04式空対空誘導弾」の搭載能力が付加される予定です。
初期のF-2が「平成の零戦」ならば、現在のF-2は「平成の烈風」と言えるかもしれません。「烈風」とは太平洋戦争末期に完成した三菱製の「零戦」後継機です。
F-2で当初、最重要視されていた対艦攻撃能力は、本来ソ連の艦隊を撃滅するためにありましたが、開発中に冷戦が終わってしまったため、配備されたころには敵が存在しないという無駄に高い能力となってしまいました。しかし近年中国の海洋進出が目覚ましく、再びその能力が注目されています。現在「XASM-3」超音速対艦ミサイルの開発が進んでおり、これが実用化されたならばF-2の対艦攻撃能力はさらに向上することになるでしょう。
またGPS誘導爆弾「JDAM」、レーザー誘導爆弾「LJDAM」の装備能力が付加されており、そしてこれらの照準に用いる「スナイパーXR」赤外線前方監視装置の運用もまもなく可能となり、対地攻撃能力も著しく増大しています。
F-2は本来130機を量産する予定でした。しかし2004年に「発展性に欠ける」という理由から、94機で打ち切る決定が下されてしまいます。
F-2は、本当に「発展性に欠けている」と言えたのでしょうか。かつて筆者(関 賢太郎)はF-2の開発に携わり現在、防衛省の先進技術実証機「心神」開発の中心的役割を担う技術者にインタビューをしたことがあります。彼らはこう言いました。
「どうしてF-2が発展性に欠けると烙印を押されたのか分からない。現代戦闘機はソフトウェアの書き換えでいくらでも機能を実装できる」
F-2は継続した性能向上によって情報処理能力が限界に達しており、将来のさらなる発展に備えミッションコンピューターの換装を行う予定です。F-2は恐らく2040年代までは運用されるでしょう。その頃には、現在よりもさらに強力な戦闘機へと進化しているに違いありません。
F-2は日本に侵攻してくる旧ソ連の船団を洋上で撃滅するために開発された当時は世界最新最強の戦闘攻撃機だった。対艦ミサイル4発を搭載して行動半径450nmは米国でも不可能な性能だった。しかし、その後、ソ連が崩壊して戦う相手が消滅し、小泉政権の軍縮とMD予算を確保するために、「小型で将来の発展性がなく価格も高価」と当時の石場防衛庁長官に決めつけられ、生産が縮小された。
また開発当初の初期不良と言うような問題が例のマスコミの誇大報道で拡散され、欠陥機とまで言われたが、このF-2戦闘機は新たな能力の付加やFCSの改良で現在でも世界第一級の能力を持つ多目的戦闘機で中国もこの戦闘機の存在をひそかに恐れている。
F4戦闘機の老朽化が言われているが、この戦闘機をその更新分としてあと40機ほども生産しておけば日本の航空兵力は飛躍的に強化されただろう。登場当初、三菱重工はこの戦闘機を「平成のゼロ戦」と言っていたが、元々、主力戦闘機として開発されたものではなく、支援戦闘機として開発されたので、立場としてはゼロ戦の後継として海軍の主力戦闘機として開発された烈風よりも局地戦闘機として開発された紫電・紫電改に近い。それを考えると、「平成の烈風」と言うよりも、「平成の紫電改」と言った方が良いかもしれない。
F-2は登場した時には戦うべき敵がいなくなっていたという戦艦大和のような悲運の戦闘機だったが、今はアップデートされて世界有数の高性能戦闘機になっている。東日本大震災で18機が水没したが、そのうち13機が復活すると言う。日本のために誠に結構なことと思う。
日本ブログ村へ(↓)