航空自衛隊は緊急発進(スクランブル)の統計を発表するにあたり、那覇基地で領空侵犯に備えるスクランブルの訓練を初めて公開した。その際、国籍不明機が領空に接近し、F15戦闘機が実際に緊急発進をした。中国ににらみを利かせ、領空を守る実任務の現場を見た。
13日午前、サイレンが鳴り響き、格納庫の横にある赤色灯が回転した。発進命令だ。隊員が待機所から格納庫へ駆け出す。
格納庫に入るとパイロットはコックピットに乗り込み、整備員は機体の下に潜り込んで点検を行った。ここまでサイレンが鳴ってから3分。常に5分以内に発進できるよう備えている。
格納庫から出たF15の機体の後ろに回ると熱風が伝わる。2機が滑走路で横に並び、1機ずつ離陸し、左に急旋回した。その先には東シナ海が広がっている。
「何回もエンジンスタートをイメージする」。那覇基地を拠点にする第204飛行隊パイロットの三宅史朗3等空佐(37)はスクランブルの待機に入る前、イメージトレーニングを欠かさない。慣れはおごりにつながり、失敗の原因になると戒めている。
3度目の那覇勤務で基地司令を務める鈴木康彦空将補(49)は「平成5~10年の勤務時に中国機へのスクランブルはほぼゼロだった」と振り返る。2度目の16~18年は中国軍の情報収集機の飛行が活発化。25年からの今回、中国機の領空接近は「まさに右肩上がりだ」と語る。
防空識別圏設定や自衛隊機への異常接近など中国が挑発を強める中、戦闘機同士が対峙(たいじ)する最前線では冷静な対処が求められる。「法令と規則の順守に加え、判断と措置を『証拠』として残すことを徹底している」(鈴木氏)という。
スクランブルという「平時」の実任務が優先され、「有事」に備えた戦闘訓練を中止せざるを得ないこともある。それでも技量を向上させるため、机上やシミュレーターによる訓練で補う工夫もしている。
部隊の増強も進めている。昨年4月、「空飛ぶレーダーサイト」と呼ばれる早期警戒機E2C部隊を新設し、警戒監視能力を強化。27年度末までにF15の飛行隊を1つ増やし、約40機に倍増する。
ただ、運用を支えるのは人である。三宅氏は「職種はさまざまでも、目的は同じ。隊員の士気は高い」と話す。とりわけ各国の空軍より高い稼働率を維持できているのは、昼夜を分かたぬ整備員の献身と職人かたぎがあってこそだ。
F15が訓練から戻り、整備員がコックピットを覆う風防を黙々と磨いている姿が印象に残った。
中国、ロシアの軍用機の活動が活発化し、スクランブルの回数は944回と過去2番目の多数を記録したそうだ。こんな状況に、様々な法的不備があっても日本人は黙々と法令に従って領空警備に対応している。この辺りが、時代が変わっても変わらない日本人の生真面目さなのだろう。集団的自衛権に関する議論がやかましいが、これに、「戦争をする国になるな」と声高に叫んでいる団体も少なくない。自衛権の話でどうして戦争をする、しないと言う単純な議論になるのか、よく分からないが、そうした連中は侵略を受けた時にどうするのかと言うことは決して口にはしない。戦後70年、日本人が平和を満喫できたのはそうした連中が絶えず平和を叫んできたからではなく、憲法第9条があったからでもない。こうした裏方の地道な努力があったからだろう。中国が、こうした日本のスクランブルに抗議をした時、航空自衛隊の幹部は冷静にこう言い放って中国を黙らせたと言う。
「我々は国際法に従って日本へのお客人をお出迎えしているだけだ」
政治家と言うのはどうにも結論が出ようもない神学論争よりも、こうした現場が少しでも有利に、やり易くなるよう法整備を行うのが、仕事だと思うが、・・・。
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