大和型戦艦と同時代の各国の代表的戦艦と言えば、米国は、アイオワ級だろう。排水量は4万5千トン、16インチ主砲9門、速力33ノットでこの戦艦の特徴は270メートルと言う長い船体に20万馬力の主機を搭載して空母に随伴できる高速戦艦としたことだった。火力、速力、防御力と3拍子揃った戦艦として米国では戦後も使用されたが、30ノットを超えると船体が振動して主砲の正確な射撃が出来なくなったという。大型艦を高速で走らせるのはなかなか難しいようだ。



英国はキングジョージ5世級、このクラスは日本ではプリンスオブウエールズが有名だろう。このクラスは14インチ砲10門、速力29ノットで常識的な戦艦だろう。この戦艦はマレー沖海戦で日本海軍の航空機により撃沈されている。命中魚雷は5発と言うので防御力は高いとはいえ、大和型の比ではない。設計としては英国らしい手堅い設計だろう。



ドイツはこれも有名なビスマルク型、この戦艦は4万1700トンの船体に15インチ砲8門と言う控えめな設計だが、防御は非常に手堅く英国艦隊に包囲され、集中攻撃を受けた際も400発以上の砲弾と数発の魚雷を受けた後も沈まずに最後は自沈したようだ。本来なら16インチ砲を装備してもおかしくはない規模の戦艦だったようである。



フランスはリシュリュー型、これも15インチ砲8砲8門を搭載した4万トン級の戦艦で速力も30ノット以上と優秀だったようだが、フランスが早期にドイツの軍門に下ったためにこれと言う活躍はしていない。主砲はなかなか優秀で射程は41キロ、380ミリの装甲貫徹力があり、枢軸側でこの主砲に遭えられる装甲を備えた戦艦は大和型だけだったようだ。




イタリアはヴィットリオベネト級、これも4万トン級の船体に15インチ砲8門を搭載し、30ノット以上の速力を誇る。大体、ヨーロッパの戦艦は4万トン、15インチ主砲、30ノットという相場があるようだ。この戦艦は航続距離が極端に短く使い勝手が悪かったようだ。また同型艦のローマはドイツのグライダー爆弾2発で撃沈されているので防御力はそう高くはないようだ。



こうして見ると船体の規模は概ね4万トン、主砲15~16インチ、速力30ノットで戦艦としては7万トン、18インチ主砲の大和型が群を抜いている。ただ、速力はやや低速だが、実際には29ノット近くまで出たようだ。米国は戦後大和型3番艦信濃の砲塔前面装甲を持ち帰ってアイオワ級の16インチ主砲で撃ち抜いたとしてその装甲を展示しているようだが、これは殆ど零距離射撃で撃ち抜いたもので実際にはこんなことは起こり得ない。自己顕示欲と負け惜しみの強い米国らしい。




米国は大和型戦艦の存在は知っていたようだが、主砲は16インチと推測していたらしい。それでこれを撃ち破る為にモンタナ型と言う5万6千トン、16インチ砲12門の戦艦の建造を計画していた。これはさすがに実際には建造されなかったが、建造されていればこれが大和型のライバルとなっただろう。



このように大和が建造された時期には各国ともに主力戦艦を建造していたので日本だけが時代遅れの戦艦を建造していたわけではない。豊かで工業力の大きな米国などは戦艦を何種類も建造している。日本にはそうした贅沢は許されなかったし、その能力もなかったので少ない数を大艦で補おうとした。大和型戦艦は巨大と言われるが、18インチ主砲搭載艦の割には極めてコンパクトに作られているという。これも貧乏国が何とか安く建造しようと知恵を絞った結果だろう。大和型戦艦は無用の長物のように言われるが、それは無謀な戦争を始めた結果であり、もう少し当時の人間に知恵があれば悲劇は起こらなかったかもしれない。


日本ブログ村へ(↓)