枝野幸男・経済産業相は、原発再稼働に前向きなのか、後ろ向きなのか。どうもはっきりしない。発言が「右にいったり、左にいったり」していると、国会でも指摘されるほどだ。

ネット上では、枝野氏が世論の動向を気にして「自分は反対だが、周りが賛成なので仕方ない」というポーズを取りたいだけだという趣旨の批判から、「推進派に圧力をかけられている」と心配する再稼働反対派の声まである。

■枝野氏は「どちらでもありません」
野田政権は2012年4月5日、福井県にある関西電力大飯原子力発電所の運転再開をめぐり、再開の条件となる新しい安全対策の暫定基準案骨子を了承した。6日中に正式決定する。

基準案は、基本的にはすでに対応済みの施策を盛り込んだ内容だ。ストレステストの1次評価結果を国が確認していることなどを求めており、大飯原発ではすでにほとんどをクリアしている。

対策に時間がかかる項目は、実施計画を出せばよいとされ、近く行われる計画工程表提出は「儀式」のようなものだ。事実上、政治決断が求められる段階にきている。

野田佳彦首相は、以前から「先頭に立って」地元説得にあたる考えを示すなど、再稼働推進派だ。一方、枝野経産相の姿勢ははっきりしない。

 
4月5日の参院予算委員会で、自民党の山本一太議員は、枝野経産相の原発再稼働に関する発言について、「右にいったり、左にいったりしている気がする」として、再稼働に「前向きなのか、後ろ向きなのか」と質問した。
 
枝野氏は「どちらでもありません」として、安全性を確認している段階だと説明するにとどめた。山本議員の質問の背景には、枝野氏の4月2日の参院予算委での発言と翌日の会見内容との「ズレ」がある。

■「反対」の翌日、「まだ賛成の判断していないという意味」
2日の予算委では、枝野氏は「現時点では、今の再稼働には反対です」と述べた。一方、3日の会見では、安全性にかかわる記録の精査を自身が終えていないから、まだ賛成という判断をしているわけではないという意味だったと説明した。

2日の「再稼働反対」発言を受け、ネットのツイッターでは、枝野氏を応援しようという、再稼働反対派による呼びかけが広まる動きも出たが、翌日会見の報道が流れると、「えっ!? 」と失望も広がった。

推進派からの圧力があったに違いないと、枝野氏が屈しないよう一層支援しようという主張もあれば、「世論気にして、慎重姿勢のポーズを取りたいだけ」「単にブレてるだけ」という冷めた指摘もあった。

枝野氏は4月3日の会見で、「2日の反対発言」について、積極的な再稼働反対ではないのかと質問されると、「違います」と積極的再稼働反対ではないと言い切った。

しかし、枝野氏は、再稼働に向け、「地元をはじめとする国民のみなさんからの一定の理解が得られなければ再稼働は致しません」(4月2日、参院予算委)と話すなど、慎重派なのかと受け取れる発言も繰り返している。

枝野氏の「地元をはじめとする……」発言について、読売新聞(ネット版、4月3日)は、大飯原発の地元、福井県の「嶺南選出のベテラン県議」が、「枝野大臣の言うことはころころ変わるという印象がある」と語ったと伝えている。

枝野氏は4月6日の会見で、今後の原発再稼働について、安全性が確認できた場合でも、「(原発再稼働抜きで)電力の需要に余裕があるとか、若干の節電のご協力をお願いして十分乗り切れるなら、開ける(再稼働させる)必要はない」と述べた。ただ、大飯原発を抱える関電については、「需給が厳しい」との認識も示した。

毎日新聞(4月2日付朝刊)が伝えた世論調査結果によると、大飯原発の再稼働について、反対が62%と賛成33%を上回っている。枝野経産相がいう「国民の一定の理解」とは、具体的にどういう状態を指すのかは、はっきりしていない。

再稼働しなくては日本の経済が立ち行かなくなることは分かっていても、敢えて火中のクリを拾って非難の矢面に立って人気(票)を失いたくはないというのが本音だろう。旗色を鮮明にしない枝野氏はこの辺りはやはり知恵が働くのだろう。政治は時として厳しい選択をせざるを得ないことがある。原発の再稼働もその一つだろう。バ菅のように一発芸で原発廃止などとぶち上げるのもいれば、旗色を鮮明にしないでのらりくらりと状況を見ているのもいる。どちらも国民にとっては困った存在であることは間違いないが、どっちが傍迷惑な存在なのだろうか。
 
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