2011年12月29日、新華ネットの報道によると、中国国防部の楊宇軍(ヤン・ユージュン)報道官は28日の定例記者会見で、これまでに中国の空母(ウクライナから購入した空母「ワリャーグ」を改修したもの)が行ってきた海上試験は所期の効果をあげており、空母は現在、計画に基づいて後続の科学研究試験を海上で行っていると説明した。
楊報道官は「中国の空母が20日から3回目の海上試験を行った」との報道について次のように話した。空母の科学研究試験は長期的なプロセスで、空母は今後も必要に基づいて試験航行を行い、関連の科学研究試験と訓練を行う。皆さんが空母の科学研究試験を理性的にとらえることを望んでいる。
「ロシアが中国へのアレスター・ワイヤーの売却を拒否しているため、アレスター・ワイヤーの配備が遅れている」との報道について楊報道官は次のように述べた。その報道はまったく根拠のないものだ。中国軍は自力でイノベーションを進める原則に基づいて武器装備を開発し、主に自力で研究開発と生産を進めている。アレスター・ワイヤーを含む空母の主なシステムや装備も、自力で開発、改修している。
海外軍事基地の建設に関する問題について、楊報道官は次のように説明した。中国は防御的国防政策を推進しており、海外に軍事基地を設立したことはない。中国の海軍艦隊が遠洋航海をするときに、沿海国の港で補給を行っているが、このような補給は各国の海軍も行っていることだ。
また次のように述べた。中国海軍は、海上の安全、領海主権、海洋権益を守る任務などを担っている。近年、海軍は総合作戦能力の近代化に重点的に取り組み、整備のタイプ転換を積極的に進めている。近海防衛という中国海軍の戦略が変わってないことを、特に強調しておきたい。
中国初の空母として注目を集めている「ワリヤーグ」だが、ウクライナから引き渡されたワリヤーグには当初からエンジンが積載されていなかったようだ。空母となれば高速力が必要なことから、本来は蒸気タービンエンジンを2基積載し、最高速度は29ノット(時速53.7km)のはずだったが、その蒸気タービンが装備されていなかった。
このため、中国はエンジンを自前で用意しなければならなかったが、中国は高出力蒸気タービンエンジンや、さらに進んだガスタービンエンジンを国産化できなかったため、ワリヤーグには舶用ディーゼルを装備したようだ。しかし、舶用ディーゼルは蒸気タービンより容積が大きい割には、出力が小さく、ワリヤーグの最高速度は19ノット(時速約35km)でしか出せないそうだ。
中国が対抗心を燃やす米海軍の空母は30ノット(時速54km)以上の速力がある。艦載機が発進するさい、米軍の空母は30ノット以上の速力で合成風を作り、艦載機に十分な揚力を与えて発進させているが、ワリヤーグは速力不足で艦載機の発艦が出来ないようだ。
さらに、大きな問題点は、ワリヤーグには着艦拘束装置がないというのだ。これがないと艦載機は狭い空母の甲板には着艦できない。要するに空母の形はしていても、空母してはまったく使えないということになる。
着艦拘束装置を製造しているロシア企業は中国への売却を拒否しているという。その理由は、中国がロシアの戦闘機などを許可なくコピーして製造していることに不快感を持っているためだという。実際、ワリヤーグの艦載機として考えられているのは「殲15」戦闘機と伝えられるが、これはロシア製の空母艦載機である「スホイ33」のコピーだと伝えられており、コピーなど中国としては当たり前のことかもしれないが、国際社会から見れば「身から出た錆(さび)」と言うことなのだろう。
空母の開発・建造はカタパルトと着艦拘束装置の開発が鍵になる。フランスの空母も米国のカタパルトを装備しているようだし、英国の新造空母もそうだろう。今のところこれらの装備を作る能力があるのは米国だけと言うことになる。そうすると中国の空母は航空機の発艦も出来なければ収容もできない、固定翼機の運用能力のない空母もどきと言うことになる。だから中国箱の空母を「空母平台」などと呼び始めたのだろうか。わが日本だったらいざ空母建造となれば電磁カタパルトと着艦拘束装置などいとも簡単に作りそうだが。
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