「どうしたの、何があったの。」
「あれ、あれ、あれ見てよ。」
女土方はモニターを指差した。そこには男女の怨念の果ての修羅場ならぬしっかりと抱き合って口づけを交わす二人の姿が映っていた。これってどうなっているんだ。僕と女土方は顔を見合わせてしまった。
そこにクレヨンが来てモニターを見ると、「あっ」と声を上げたまま口をあけっぱなしのバカ面で床に座り込んだ。まあクレヨンでなくとも驚いて当然だろう。
ついさっきまでもめにもめて憎しみ合っていた、と傍目ではそう認識していた男女がほんの十数分で抱き合って熱い口づけを交わすまでに関係改善するのだから男女の仲というのは秋の空どころではない。それでも刃傷沙汰になるよりははるかにましな結果なのだろうが。
モニターは二人が抱き合ったままソファに倒れ込むところを映し出していた。このままではどこまで行くのか分らなくなってきたので僕はモニターのスイッチを切った。そのままどうなるのか行く先を見ていてもいいのだが、それも何とも趣味が悪いように思ったので。
僕は応接室に行ってみようかと思ったが、ドアを開けたところがその真っ最中では具合が悪いと逡巡していると女土方が、「ちょっと様子を見て来たら」と言った。
「行ってもいいけど二人の世界に浸っていたらどうするのよ。ちょっとモニターを点けてみようか。そうすれば、・・・。」
僕がそう答えるとクレヨンがリモコンを横からひったくるようにしてスイッチを押した。
「あっ」
画面に部屋の様子が映し出されるとそこには笑顔で穏やかに話し合う例の男とテキエディの姿があった。どうやら理性が欲望に勝ったらしい。これで安心して応接間に出て行けると思ったら二人は立ち上がって部屋を出るところだった。
「こっちへ来るみたい。」
僕は女土方を振り返った。女土方も黙って肯くと身構えるようなしぐさをした。
すぐに二人がダイニングに入って来た。できるだけ自然にしようと思ったが、やはり僕も身構えてしまうのはやむを得ないことだった。二人は僕たちの前に立った。そしてテキエディがまず言葉を発した。
「いろいろと迷惑をかけてごめんなさい。でも、話はついたから。もう大丈夫。」
「話はついたってどうついたのか、聞いてもいい。」
よりが戻ったことは分かっていたが、その後にどう話がついたのか一応聞いておくべきだろうと思ったし、興味もあった。
日本ブログ村へ(↓)