戦艦と重巡洋艦とどちらが効果的な戦力かと言えば、それぞれ役割が異なる戦闘艦なので一概には言えないだろう。巡洋艦はワシントン海軍軍縮条約によって「5インチ以上8インチ以下の砲備を持つ10,000トン以下の艦」と定義され、これを期限に発達したようだ。
 
軍事力は仮想敵とする国家が、一定の戦闘能力を有する艦艇を建造するとさらにそれを超える艦を建造する。その繰り返しで際限がなくなっていく。それは今も昔も変わらない。日本海軍はアメリカ海軍のオマハ級軽巡洋艦を凌駕する艦として古鷹型を建造した。これが条約によって規制された主力艦のような厳しい制限を受けない補助艦艇だったために各国はこのクラスの艦艇の建造に心血を注いだ。
 
日本海軍は妙高型や高雄型といった戦闘能力の高い巡洋艦を建造したためにロンドン海軍軍縮会議で、このクラスの艦を規制することになった。この条約で6.1インチ以上8インチ以下の艦を「カテゴリーA」、砲口径6.1インチ砲以下の巡洋艦を「カテゴリーB」と分類して制限した。前者が重巡洋艦、後者が軽巡洋艦と通称された。軽巡洋艦と重巡洋艦の違いは要するに主砲の口径だった。
 
艦艇の保有トン数と個艦のトン数、主砲が制限されているので許された範囲で可能な限り戦闘力の高い艦を建造するのは当然だが、重巡洋艦は、排水量制限のため自艦の主砲に抗堪できない低い防御力など、バランスの悪い艦艇だったようだ。
 
条約の失効とともに排水量の制限は取り払われ、1万トンを大幅に超過した重巡洋艦が建造され、アメリカ海軍のデモイン級重巡洋艦のように初期の戦艦を排水量で凌駕する艦も建造されたようだが、火力と防御力で戦艦には対抗できず、軽巡洋艦のような軽快性もないという欠点があったようだ。
 
そうして見るといかにも時代遅れの過去の遺物のように言われた戦艦だが、30ノット程度の高速性能を持った戦艦であれば火力・防御力は群を抜いており有効な戦力だったように思う。ただ、高速と言っても4,5万トンの大艦に高速性を持たせるのは難しかったようで究極の高速戦艦アイオワ級も30ノット以上になると振動が大きくなって主砲の正確な射撃が出来なかったようだ。
 
しかし、どのような艦艇を建造しても太平洋戦争以後の圧倒的な航空攻撃に耐えられるような水上戦闘艦を建造することは不可能だろうから戦闘力を発揮するためにはそれなりのエアカバーが必要だっただろうし、それならば艦艇の砲力よりも航空攻撃の方がはるかに足が長く効率がいいだろうからやはり大型水上艦艇は空母を除いて消え行く運命だったのだろう。
 
現在の艦艇は第二次世界大戦前のような厳格な艦艇の区別は存在しないようだ。特に水上戦闘艦は巡洋艦と駆逐艦の区別も曖昧なようだ。その最たるものはわが海上自衛隊で、排水量2万トンに迫る駆逐艦を保有し、さらに2万5千トンのヘリコプター搭載駆逐艦を建造中だからおそらく22DDHは世界史上最大の駆逐艦としてギネスに登録されるかもしれない。
 
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