今の特殊状況になってもそれなりに異性が、そう言って良いのかどうかは分からないが、僕にとって女性は今の今も異性だが傍から見れば同性愛に見えるんだろうが、途切れたことはないのだから。
そんな僕だからテキエディの相手のことを思うといい加減にすればいいと思う。何と言ってもやっていることはもう犯罪のレベルに達しているのだから。こんなことをしていると人生そのものを台無しにしてしまう可能性がある。
たかが恋愛じゃないか。人生をかけるほどのこともないだろう。しかし、されど恋愛なんだろうか。そんなことを考えているうちに何だかやりきれないような気持になってきて、弁護士に相談してみようということで、もういい加減にこのことを考えるのは一旦打ち切ることにした。でも、それにしても他人を愛するって何なんだろう。
翌朝は何となくだるさに苛まれながら女土方に起こされて目覚めた。
「大丈夫、ちょっと過ぎたのかな。」
ぐずぐずしている僕を女土方が心配そうにのぞき込んだ。そう言えば昨日の女土方は何時になく気合が入っていたようだが、それよりも僕にはテキエディのことで眠れなくなったことが堪えたのかもしれない。
何とか起き上がって食堂に行くと最近癖になり始めたシリアルに牛乳を注いて口に放り込んだ。
「大丈夫」
女土方がまた心配そうに声をかけてくれた。大丈夫だって。ちょっとくらい濃厚だったからってその程度じゃあ何ともないから。
「大丈夫よ、ちょっと彼女のことを考えていたら眠れなくなって眠いだけだから。あなたのせいじゃないわ。あなたとは楽しかった。」
僕は女土方の肩に手を回すと抱き寄せて髪に軽くキスをした。朝のダイニングで女同士抱き合っているのは医用と言えば異様な光景だろうが、僕としては普通の男と女の関係と思っているから構うものか。
しかし、それにしてもサルとトラブルメーカーが起きて来ない。何をやっているんだと携帯を取ってガンガン電話するとサルが寝とぼけた声で電話に出た。「うー」とか何とか言っている。
「何をしているの。早く起きなさいよ。遅れるわよ。それともそこに行って起こしてあげようか。」
僕がそう言うとサルは、「大丈夫、すぐに起きるから」とあわてたように言って電話を切った。それからしばらくすると寝とぼけた顔で二人が起きてきた。
「早くしなさい。もたもたしているとその格好で引きずって連れて行くわよ。」
サルは女の中でも小柄な体つきなので簡単に引きずっても抱えても連れて行けるかもしれないが、テキエディはやや大柄で普通よりは太めなので引きずったり抱えたりするのは男の時ならともかく今はちょっと厄介かもしれない。まあ、実際にやるわけではないのでどうでもいいが。
二人は適当に食べ物や飲み物を漁ってじたばたと部屋に駆け込んで行った。早くしろと僕が急かせたのが効いたのかもしれない。僕らはそれを見て部屋に戻って支度を始めた。
もう女の生活も板に付いているのでそんなに慌てたりはしないが、相変わらず化粧などは必要最小限で済ませていた。そしてこれも相変わらずのカーゴパンツであっという間に支度は終わった。女土方は僕ほどではなくそれなりに身支度を整えていたが、てきぱきと手際が良いので身づくろいもそれほど時間はかからなかった。
支度を終えてあの二人を見に行くとサルは鏡の前であれこれごちゃごちゃやっているし、テキエディはまだ下着姿だった。それを叱咤激励してやっと出勤と相成った。当分はテキエディをここに置かないといけないので朝の出勤はこれまでの倍は苦労するんだろう。少し気合を入れておかないといけないかもしれない。
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