「大人なんだから泣いているんじゃないの。ちゃんと話しなさい。」
こんなことに付き合わされてだんだん腹は立ってきた僕はさらに畳み掛けるようにテキエディに尋ねた。
 
「ねえ、そんなにきつく言わないでもう少し穏やかに優しくしてあげないと言えることも言えなくなってしまうわ。だからもう少し穏やかに、ね。」
 
女土方は優しいが、僕にはどうしても理解ができない。僕が男だったころもその手の写真やビデオなどを残そうという気は全くなかった。その最中は愛があろうとなかろうと優しく楽しく、そして淫らに楽しくがモットーだったが、それを記録に残してもリスクになるだけというのが僕の思うところだった。
 
「女ってやっぱり好きな人にせがまれると弱いんだと思うわ。それは私も分かるような気がするわ。」
 
女土方がそんなことをつぶやいた。こっちは立場としてはせがむ方を長く続けてきたので、せがまれればアジの開き写真を撮らせるという気持ちは何と言われても理解はできなかった。
 
それなら女土方は僕が頼めば応じてくれるのかな。でもそんなものを残してもそれが何時どこで僕らに牙を剥くか分からないじゃないか。そうした潜在危険因子は排除するのが危機管理の原則だろう。
 
「それで私は何をすればいいの。このことで。」
 
「それを相談したいの、こんなことを止めさせるためにはどうすればいいのか。」
 
何をバカなことを言っているんだ。事ここに至った以上話し合いの余地などあるものか。自存自衛の場合には武力行使も認められるんだ。止めさせるには相手が『もう参りました。勘弁してください。』というまで戦うしかないだろう。
 
「とことんやるしかないでしょう。相手が『もう参りました。もうしません。』というまで。」
 
「話し合う余地はないのかしらね。」
 
女土方は外交交渉に一縷の望みを託しているようだが、もう外交交渉で何とかなる時期は過ぎている。敵はすでに写真をネットで公開するという武力行使に出ているのだからこれを止めさせるには法的措置という武力行使しかないだろう。
 
「復縁を迫ったり危害を加えるなんてことはないの。ストーキングっていうの、その手の行為は。」
 
僕はテキエディに聞いてみた。それでもテキエディはしゃくり上げるばかりで何も答えなかった。
 
「ほら、何を泣いているのよ。自分がしでかしたことでしょう。これはあんたの命にかかわることなんだからしっかりしなさい。危害を加えられてからじゃあ泣くこともできないのよ。こうなったことはあんたにも責任があるのよ。相手の男ばかりが悪いんじゃないの。あんたも悪いのよ。分かっているわね。」
 
僕はめそめそしているテキエディに気合を入れてやった。
 
「メールが来たり、郵便受けに手紙が入っていたり、・・・。戻って来なければ考えがあるって、・・・。」
テキエディは途切れ途切れに脅迫を受けていることを話した。
 
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