女土方とテキストエディターのお姉さんはなかなか戻ってこなかった。クレヨンは落ち着かないようだったが、どうせ色恋沙汰だろうと思っていた僕はあれこれ片付けないといけない雑用に没頭していた。
 
そこに女土方が戻って来た。女土方の顔には何だか難しい困惑したような色が浮かんでいた。
 
「ねえ、ちょっと一緒に来てくれない。」
女土方は僕のところに来るとそう言って僕を促した。
 
「どうしたの、彼女のことなの。」
僕がそう聞き返すと女土方は黙って肯いた。色恋沙汰なのにどうして僕を呼ぶのかちょっと不思議に思ったが、面倒だから嫌だとも言えないので黙って立ち上がった。
 
ミーティングルームに入るとテキエディのお姉さんがしゃくり上げて泣いていた。それと女土方の複雑な表情を見て何だかとても嫌な気がした。できることなら関わりたくはなかったがここから逃げ出すことは不可能だった。
 
「どうしたのよ、すすり泣いたり深刻な顔をして。」
僕は女土方を振り返った。
 
「結構深刻なよの、この子の場合は。」
この子というか、もう30過ぎだろうが。甘やかすから自立できないんだろう。大体こっちはこの間の盗撮問題さえ片付いていないというのに。
 
「それで一体どうしたって言うの。あのね、こんなこと言ったら失礼かもしれないけど何だかとても嫌な予感がするの。不吉な感じっていうの、恐ろしく厄介なことになりそうな、多分、もうなっているんでしょうけど。」
 
僕がそう言うとテキエディのお姉さんはわっと泣き出した。女土方は、「あーあ」とでも言いたそうな顔をして僕を見た。
 
「分かったわよ、話を聞くわ。それで一体何があったの。どうせ色恋話だろうけど。何時までも泣いていないで早く話しなさい。聞いてあげるから。」
 
また、テキエディのお姉さんはまた泣き出した。どうもこれはだめなようだ。僕は女土方を振り返った。
 
女土方も覚悟を決めたように話し始めた。その話というのは僕が予想していたよりもずっと複雑なようだった。
 
そして女土方の話が終わった時には呆れ返ってあいた口が塞がらないと言った状況になってしまった
 
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