平成23年度予算の成立というヤマを越え、菅直人首相が自民党との大連立への環境整備に本腰を入れ始めたようだ。そこには、「大震災からの復旧・復興」を大義名分にした政権延命策という思惑も透けてみえるが、ラブコールを送られる自民党は「首相退陣」を大連立の前提条件としている。大連立を唱えれば唱えるほど自らの立場が危うくなる-。首相はそんなジレンマを抱えている。

1日夕の記者会見で、首相は自民党への“期待”を隠そうとしなかった。
「復旧・復興に関しては与野党を超えて協力する態勢をつくりたい。自民党をはじめとする各野党とともに計画を立てていく形が生まれることを切望している」
首相は自民党との連携に向けた舞台装置も用意していた。有識者や被災地関係者による「復興構想会議」の設置だ。

「復興構想会議の提案や計画を実行に移すための政府の態勢づくりに入り、今月中には固めたい」
首相は会見でこう表明した。被災者からすれば、これから態勢をつくるというのはあまりにも悠長な話だが、首相には、復旧・復興案を策定する際に自民党案も取り込むことで、大連立に向けた信頼関係を醸成する狙いがある。

民主党側も大連立への布石を打ち始めた。

◆閣僚増員を提示
岡田克也幹事長は1日、内閣法改正による閣僚の3人増員の具体像を自民党の石原伸晃幹事長に示した。増員される閣僚は、震災復興担当相、松本龍防災担当相が兼務する環境相、枝野幸男官房長官が兼務する沖縄北方担当相の3ポスト。加えて副大臣6人、政務官6人、首相補佐官5人を増やす案も提示した。来るべき大連立を見据えれば、自民党に用意できるポストは多ければ多いほどいい。

岡田氏は1日、三重県四日市市で記者団に「これだけ大きな災害なので、総力を結集して能力がある人に働いてもらうことは当然だ」と述べた。未曽有の災害を受け、政界が大連立に向けて動いているのは間違いない。ただ、その場合の首相が誰であるかという点では、さまざまな思惑が交錯する。

「谷垣禎一・自民党総裁を首相とするのなら協力してもらえるか」「首相に加え、いくつか閣僚ポストを付けてもいい」
自民党重鎮のもとには最近、民主党側からこんな持ちかけがあるという。1日には民主党が「首相・谷垣氏、副総理・仙谷由人官房副長官、民主党代表・輿石東参院議員会長」という大連立案を打診したという噂が政界を駆けめぐった。

◆参画に傾く重鎮
自民党は重鎮を中心に大連立への参画に大きく傾いている。谷垣氏は31日、麻生太郎元首相の事務所を訪れ、大連立に関して相談を持ちかけた。
谷垣氏「どうしたらいいでしょうか…」
麻生氏「総裁が『やる』という腹を固めなければ、事態の収拾はつかないでしょうが」
谷垣氏は麻生氏に、首相からの打診は一度きりということも打ち明けた。自民党執行部にしてみれば、首相退陣という条件が確約されない限りは大連立には踏み出しにくい。自民党が子ども手当など「バラマキ4K」に「菅抜き」を加えた「5Kはずし」にこだわるのは、求心力を失った首相が大連立を推進できるとは信じていないからだ。ましてや、党内抗争を繰り広げる民主党が「谷垣首相」でまとまるのか…。

 「誰が首相の首に鈴を付け、民主党をまとめられるのか。その見極めがつかないうちに大連立への回答はしにくい」
 
バ菅は自民党を取り込んで、政権運営・復興対策のノウハウを得るとともに自分の足元を固めたい。民主党もこの難局を乗り越えて長期政権として政権を維持するためには自民党を取り込むのが手っ取り早い方法だと考えているのだろう。
 
自民党にしても民主党の失策続きで政権奪還へ道が開けそうになったところに今回の大災害で何の権限もない野党の立場で政権を批判し続けると逆風が自分たちの方に向きかねない。それならばここで大連立を受けて長期にわたって政権を維持してきた実力を発揮して復興が一段落したらその時点で次に繋げたいろいうところだろう。何よりも埋没してしまうのが怖いというところだろうか。
 
しかし、実際に寄せ集めで混乱している民主党にさらに自民党が加わってまとまりをつけて円滑に動くのだろうかという気がしないでもない。政策にしても折り合わない部分が多いので大連立と言っても簡単にはいかないだろう。何となく数合わせという匂いがしないでもない。
 
そんな呉越同舟のような政権を果たして何の指導力もないバ菅がまとめて引っ張って行けるのだろうか。無理じゃないのかと思うがどんなものだろう。震災復興に関して与野党連合で取り組むという考え方もあるのだろうが、予算の問題で他の政策との擦り合わせが必要だろうから、これもなかなか難しいだろう。
 
お互いに党を割って政界再編という手もあるが、今の状況でそんな政局などやっている場合でもないだろうし、そんなことをしていると政党政治自体が崩壊しかねない。しかし、国難だの何のというが、要は政権の座にあるバ菅内閣が責任を持って対応すればそれで済むことで、こんなところで大連立などを持ち出すということはねじれ国会に加えて未曽有の大災害に原発事故で、「もうどうにもなりませんから手を貸してください」とバ菅内閣が白旗を上げているということなのだろう。
 
そうだとしたらこんな時こそ命がけでも国を支えて復興させるという責任を背負っている内閣として何とも情けないことだ。負うべき責任を全うできないならさっさと政権の座から降りればいいのにそれでもやはりしがみ付きたいんだろう。
 
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