「まあ何か困ることでもあったら遠慮しないで言ってくれ。僕らにも力になれることがあるかもしれない。」
「はい、ありがとうございます。その時は遠慮なく甘えさせていただきます。」
僕はそう答えて社長室を下がると自分の部屋に戻った。部屋に戻ると入れ替わり立ち代わり人が出入りしては事件のことを聞きたがった。中には僕が弄ばれたなんて話もあるようだ。
四十女では弄ばれても大した話題にもならないだろうが、どうせ聞くならうわさ話は面白おかしい方がいいのだろう。そう言えば奴も気が強くて頭のいい女を弄ぶのは刺激的だとかなんとかぬかしていやがった。
頭がいいかどうかはまた別の問題だが、気が強いことは間違いないだろう。僕も男だからそういう気持ちは分からないでもないが、相手を選ばないととんでもないことになるのは見ての通りだ。
入れ代わり立ち代わり人が来て午前中はそんなこんなで終わってしまった。もっとも僕も興味本位でやって来る御仁には適当に相手をしていただけなのでそれほど真面目に応対してたわけでもないが。
午後になると大分落ち着いてきて面白半分に訪ねてくる人の数も大分減った。やっと落ち着いて仕事に手を付け始めたが、何となく部屋の雰囲気がおかしかった。午前中はざわざわして気が付かなかったが、何となく部屋の雰囲気が沈んでいた。
どうもその原因はテキストエディターのお姉さんが落ち込んでいるからのようだった。この女はクレヨンほどではないが、かなり底抜けに明るい方でこれまであまり沈み込むようなことはなかったのだが、どうしたことだろう。
聞いてみようかとも思ったが、最近付き合っているという彼と喧嘩でもしたのかと思った程度で、その時はさほど気にもしなかった。まさかそれが新たなトラブルの始まりになるなどとは夢にも思わなかった。
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