「政治家を目指す原点が北方領土問題」と対露外交に前のめりだった前原誠司外相だが、酷寒のモスクワで待ち構えていたラブロフ外相は、会談冒頭から皮肉を込めた先制パンチで日本に不満をぶちまけた。メドベージェフ大統領主導の対日攻勢に乗るラブロフ氏の繰り出す提案の数々に対し、前原氏は防戦を強いられ、会談後の共同会見では憮然(ぶぜん)とした表情だった。

会談の冒頭で、ラブロフ氏はいきなり、冷却化する日露関係の現実を指摘し、その原因が日本側にあるのだと批判した。前原氏は『日露の険悪化はロシア側が原因…』と反駁(はんばく)したかっただろうが、ぐっとこらえ、「関係強化がお互いの国益になる」と日本側の前向きな姿勢を強調した。

北方領土の軍備強化指令など、一丸となっているロシア側にとって、ひとり乗り込んできた前原外相の後方支援はいかにも脆弱(ぜいじゃく)にみえただろう。

「北方領土の日」(7日)の菅直人首相の「許し難い暴挙」発言は威勢はよかったものの具体策がないことは明白。何より対米、対中でみせてきた菅政権の「外交力」の弱さはすでに見積もり済みだった。

会談で、両外相は領土問題で双方の立場を述べ合っただけに終わり、ラブロフ氏は菅首相発言などを批判。ロシア側は「北方領土はロシア領」を前提とした上での「歴史専門家による委員会」設置を提案した。前原氏はとりあえず拒否したが、ロシア側が次々の放つジャブに完全に後手に回った印象を残してしまった。

日本の対露政策の目玉は「領土がすべてではない。両国のウィンウィン関係を目指す」はずだった。しかし、成果と呼べる内容はなく、むしろ「北方領土の経済協力」について、前原氏が「日本の法的立場を害さない前提でどのような協力ができるかハイレベルで議論していく」と応じ、ロシア側には「日本の譲歩」ととられかねない立場を表明することになった。前原氏の初訪露は大国の壁、その戦略性に立ち尽くした格好だ。
 
大風呂敷を広げて掛け声だけは威勢が良かったが、無策では強かなロシア外交の前には手も足も出ないだろう。だれも住んでいない無人島や荒野の話ではない。ロシア人が1万7千人も居住し、ロシアが実際に行政を志向している土地だ。その実効支配の持つ意味は生半可な外交政策など吹き飛ばしてしまうほど重い。
 
それだけしっかりと地盤を固めている相手に何らの策もなく、強がりだけの遠吠えのような掛け声だけで出かけて行っても成果を得られるはずもない。カモがネギだけでなく鍋からマキから調味料まで背負って行くようなものだろう。
 
いくらなんでもそのくらいのことは分かっているだろうに、結局バカ丸出しで無策をさらけ出して打ちのめされるために行くなら税金がもったいないし、そんな外務大臣などいらない。政治生命をかけるというならとっとと辞任でも何でもしてもらいたいものだ。
 
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